●『二人の日常〜クリスマス編〜』
レシミアと美希の二人だけで行われた暖かなクリスマスパーティは、そのプログラムをほとんど終え、片付けの時間となっていた。招かれた立場であるレシミアは、全部引き受けるからと言う美希に甘え、今はベッドに座って、ぼんやり天井を見上げていた。 「ベッド……だね、美希さんの」 レシミアは整ったシーツの上をぽんぽんと叩く。座っている位置としては、二人でケーキを食べ、プレゼント交換をしていた時と変わらないが、手持ち無沙汰というかなんというか、恋人のベッドの上に座っているというのは、そわそわした気分になる。 「美希さーん、やっぱりボクも手伝いましょうかー?」 「大丈夫だぜー。というかレシミア、もう終わったから手を拭いてるとこだしさ」 部屋向こうの美希に声をかければ、いつも通りの調子で答えられた。やることもないし、横になって楽にしようとも思うが、美希は自分の為に仕事を受け持ってくれたのだから、だらしなくしているのも気が引ける。 程なくして部屋に美希が現れる。美希は手に何も持っておらず、これでもうパーティもおしまいか、と座ったままのレシミアは思った。 「お待たせー。片付けとかは、これでもう全部終わったぜ」 「うん、ありがと。それじゃボクは、今日はこれで――」 帰るね、とレシミアが言う前に、美希は部屋の照明を落とす。部屋は瞬間的に真っ暗となり、明るさに慣らされていたレシミアの目は、それだけで美希の姿を見失ってしまった。 「美希、さん? ……ひゃ」 と、レシミアの肩に手が掛かる。鎖骨に近い位置へ置かれた手は、指先ではなく手のひら全体で、レシミアの体を斜めに押した。 視界が無い所に不意を突かれ、レシミアの硬直した体が容易に傾いていく。床についていたはずの踵は宙に浮き、支えを取り戻すため反射的に膝を伸ばそうとすると、脚の間に割り込んできた美希の体がそれを阻んだ。 足裏という設置面を失ったレシミアが、バランスを失って倒れこむ所を、美希の右手が背中に周って支える。美希はその手を手前に引くと、腰を支点に回るレシミアの足を邪魔しないようベッドに乗り上がり、同じくベッドの端に引っかからないように彼女が曲げた右膝の上を跨いだ。 「……あ、あの、み、美希さん?」 レシミアの目が暗がりに慣れてくると、自分の体がベッドに沈み、美希の体が覆いかぶさってきていて、つまりは押し倒されたのだ、と理解できるようになる。 「押し倒され、って。あれ、どゆことかな。もしかして美希さんがプレゼント? いやさっき交換会したし。あれ?」 「レシミア……」 かばう様にレシミアの体に敷かれた美希の右腕に力がこもる。と同時に、美希の左手がレシミアの首筋を撫で、抱き寄せた。 「美希さ……ん……。ボクはいいけど、いいの?」 「レシミアの他には、もう何も見えてないぜ」 「……そっか。なら」 いいよ、と応える方法は、言葉のほかにも、それこそいくらだって。
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