●『温かなクリスマスプレゼント』
窓の外に広がるのは、きんとした空気も見えそうな冴え冴えとした冬の景色。 けれど、部屋の中は暖かい。 暖炉の中では赤々とした炎が爆ぜる。その熱が部屋に満たされ、その部屋全体を暖めていた。
「よく食べたぁ」 空はそう言うと、ぱたりと倒れ込んだ。 「本当。お腹いっぱい……」 空に続くようにして、禊もまた横になる。 そのまま、ゆるゆると会話を続けた。他愛のない、のんびりした時間を紡いでいく。 二人で過ごす静かなクリスマス。 クリスマスケーキも食べ終わり、ふわふわと会話を交わし……そんな空と禊だったが、お腹が満たされたせいか、部屋の暖かさもあいまっているのか、どちらからともなくうとうとしていた。 転がった空の手に、禊は自らの手を重ねる。 うとうとしつつも、空は重なった禊の手を握った。 互いの体温が、触れあう手から広がる。 穏やかな時間。緩やかな空気。 (「幸せ」) ほぅ、と空は細く息を吐いた。そのまま口元に笑みを刻む。 「ふふ……」 禊は微かな笑い声を漏らした。 つながれた二人の手に、リボンがくるりと柔らかく結ばれている。 小指をつなぐ赤い糸の代わりに、リボンを結んだのは禊だ。 空はそんな禊のイタズラにも、まどろみに身を任せたままでいる。 先ほど食べたケーキのクリームを顔につけたまま、幸せそうに眠る空。 禊はその寝顔を優しい笑顔で見つめながら、再び笑った。 「ふふ……、空は可愛いなぁ、もぅ……♪」 小さく、つぶやく。
――この暖かさは暖炉だけじゃなく、貴方が暖かいから。 重ねた手が、貴方という存在をより確かに感じさせてくれるから。 この満腹はケーキだけじゃなく、貴方が笑顔だから。 ――お腹ばかりではなく、胸が、心が満たされるから。 そんな気持ちを二人で感じあう。 まどろみに身をまかせながら……手をつないで、貴方を感じて。 今、この時を……貴方と、二人で。 その『時』が、互いにとってかけがえないプレゼントになる。
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