十七夜・空 & 先旗・禊

●『温かなクリスマスプレゼント』

 窓の外に広がるのは、きんとした空気も見えそうな冴え冴えとした冬の景色。
 けれど、部屋の中は暖かい。
 暖炉の中では赤々とした炎が爆ぜる。その熱が部屋に満たされ、その部屋全体を暖めていた。

「よく食べたぁ」
 空はそう言うと、ぱたりと倒れ込んだ。
「本当。お腹いっぱい……」
 空に続くようにして、禊もまた横になる。
 そのまま、ゆるゆると会話を続けた。他愛のない、のんびりした時間を紡いでいく。
 二人で過ごす静かなクリスマス。
 クリスマスケーキも食べ終わり、ふわふわと会話を交わし……そんな空と禊だったが、お腹が満たされたせいか、部屋の暖かさもあいまっているのか、どちらからともなくうとうとしていた。
 転がった空の手に、禊は自らの手を重ねる。
 うとうとしつつも、空は重なった禊の手を握った。
 互いの体温が、触れあう手から広がる。
 穏やかな時間。緩やかな空気。
(「幸せ」)
 ほぅ、と空は細く息を吐いた。そのまま口元に笑みを刻む。
「ふふ……」
 禊は微かな笑い声を漏らした。
 つながれた二人の手に、リボンがくるりと柔らかく結ばれている。
 小指をつなぐ赤い糸の代わりに、リボンを結んだのは禊だ。
 空はそんな禊のイタズラにも、まどろみに身を任せたままでいる。
 先ほど食べたケーキのクリームを顔につけたまま、幸せそうに眠る空。
 禊はその寝顔を優しい笑顔で見つめながら、再び笑った。
「ふふ……、空は可愛いなぁ、もぅ……♪」
 小さく、つぶやく。

 ――この暖かさは暖炉だけじゃなく、貴方が暖かいから。
 重ねた手が、貴方という存在をより確かに感じさせてくれるから。
 この満腹はケーキだけじゃなく、貴方が笑顔だから。
 ――お腹ばかりではなく、胸が、心が満たされるから。
 そんな気持ちを二人で感じあう。
 まどろみに身をまかせながら……手をつないで、貴方を感じて。
 今、この時を……貴方と、二人で。
 その『時』が、互いにとってかけがえないプレゼントになる。



イラストレーター名:藤澤なづき