●『ふたりで過ごす初めての聖夜』
イルミネーションで飾られた聖夜の町を、二人で一本のマフラーを巻き、手をつないで歩いていく。 癒太と美月……ニ人は今年の秋頃に、見事『恋人同士』となった。 「あ……美月、ちょっと待ってて」 癒太は美月にそう告げると、マフラーをぐるぐると巻きつけて、飲み物を買いに行った。 突然の癒太の行動に首を傾げつつ、顔の半分をマフラーに埋めるようにしつつ、美月は大人しく待つ。 「美月、これ」 湯気が立ちのぼる暖かい飲み物を買ってきた癒太に「ありがとう」と礼を言う。巻きつけられたマフラーを癒太に巻いて、再び『二人で一つ』になった。 癒太が買ってきた飲み物に早速口をつける美月だったが……コップの中に、ガチャガチャで見るようなカプセルがある事に気が付く。 「?」 なんだろう、と取り出した。 隣では癒太が少し緊張した面持ちなのだが、美月はそのことに気付いていはいない。 取り出して、カチャリと開けてみる。中を見ると――そこに、指輪が入っていた。意識せず「え」と細い声が漏れる。 「――僕は」 緊張して少し渇いた声音で、癒太は口を開いた。 「これからの人生を……君と歩いて行きたい……年齢的にはまだ早いかもしれないけど」 癒太の声を聞きながら、美月はじっと手元の指輪を見つめる。 「……僕と……婚約して下さい」 「え……ボクで、いいの?」 ビックリして美月は癒太の顔を見上げた。 驚いて……胸がキュンとして、嬉しくて、どっか飛んできそうになる。 癒太は緊張していて堅い表情だったけれど、どこまでも真剣な眼差しで力強く答えた。 「もちろん!」 興奮と、感動と――様々な感情で、美月の顔が真っ赤になっている。けれど……。 「あ……うん」 美月は癒太に応じた。ピョンッと飛びつく。 「ボクも癒太っちと一緒がいいよ♪」 言葉と共に、癒太に抱きつく。 ――大好きだよ。大好きなんだ。 ――これからも、ずっと。変わらない、変えられない――。 しばらくお互いに抱擁し合った後、癒太は美月の左手の薬指に指輪を嵌めた。 「――君と共に歩み、生涯愛する事を誓う」 静かな癒太の誓いの言葉に美月もまた、誓いの言葉を口にする。 「貴方と共に歩み、生涯愛することを……誓います」 美月はそう言うと、一度癒太の目を見つめ、そのままそっと目を閉じた。 美月の仕草の意図を察し、癒太は彼女の頬に手を当てて優しく口づけを交わす。
その後、再び町の中を幸せな気持ちのまま、二人で歩いた。 ――今度は、腕を組んで。 二人で過ごす初めての聖夜に、共に歩む約束を。……生涯の誓いを。 「来年も一緒にクリスマスを過ごそうね」 「うん! 約束だよ☆」 言いながらぎゅうっと腕の力を強めた美月に、癒太は笑みを深めた。
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