テオドール・フォルクナー & リヒター・クライデンヴァイス

●『愛玩 〜聖なる夜の秘め事〜』

 クリスマスパーティーを楽しみ終えた二人は、部屋で二人っきりであった。
 既に夜。
 外では、雪がちらついているのだが、二人にとってそれは些細なことであった。

 部屋の中にシャワーの音が響いた。
「もうすぐ、なんだよね……」
 誰もいない部屋に一人、リヒターの心拍数が徐々に加速していく。
 こんな夜更けにすることといえば、たった一つ。
 思わず、首に付けていたチョーカーに触れる。
 それな従属の証の、首輪。
 リヒター自身が望んで付けたものであった。
 ふと、あれだけ響いていたシャワーの音が止んでいた。今、シャワーを使っていたのは、テオドールだ。
 リヒターの、大切な大切な想い人。
 それが、テオドールであった。
 その彼がシャワーを終えて、出てくるようである。布が擦れる音が僅かに聞こえる。
 そして、仄かに上気したテオドールがやってきた。
 シャワーを浴びたその体を、バスローブ一枚でやってきたのだ。
「バスローブ、着てきたんだね」
 恥ずかしそうにもじもじするリヒター。
「えっと、僕もシャワー、浴びてきて……」
「いいよ、そのままで」
 テオドールは、そのまま、ベッドの上に連れ込んだ。
「で、でも……やっぱり……」
「また後で、シャワー入ることになるだろうから」
 自覚、していないんだろうか?
 テオドールは、心の中で思う。
 恥ずかしそうにするリヒターが、いじらしく、愛らしいことに。
 もう、堪らない気持ちだということに。
「ず、ずるい、よ……」
 テオドールは、そっとリヒターのシャツのボタンを外していった。
 逃さないといわんばかりの右腕は、しっかりとリヒターを握っていた。
 テオドールは理解している。
 彼は逃げない、離れない。それは、彼がしている首輪に示されていた。
 けれども、押さえつけてしまう。
 今日が特別な日だからだろうか、余計に変なことを考えめぐらせてしまう。
 不安になることを、ずっとずっと。
 力が入りそうになるのをぐっと堪え、右腕の力を緩めた。
 そのかわりに、彼を沢山愛そう。
 そう、今日は恋人達の素敵な夜を楽しむ日。
「愛してる……リヒター」
 吐息のような優しいテオドールの声が、リヒターの耳元で囁く。
 蕩けるような、甘い響きで。



イラストレーター名:笹本ユーリ