●『とあるサンタのプレゼント』
クリスマスの舞踏会も終わり、御凛が自宅でほっと一息ついていた時のことだった。 「ちょっとアンタ、何トチ狂ってるのよ!」 部屋中に、空を裂くような怒声が響いた。声の主である御凛は、わなわなと震えている。 その原因は、ルシアから手渡された『ルシアお手製サンタクロースコスチューム』 問題なのは、ただのサンタクロースではなく、見るからにかなりセクシーなデザインになっているところだ。 スカートの短さなどを見ても、御凛がツッコミを入れてもおかしくはない。 「可愛い彼女の姿を見てたいという希望が、おかしいはずがない」 ルシアは自信満々に言い放ち、服を御凛の身体に押し当てた。裁縫の腕には自信があるし、御凛に似合うと確信していた。 「上半身ピチピチで、下は超ミニスカじゃないのっ」 真っ赤になって抗議する御凛に、ルシアは笑顔を浮かべる。 「問題無しだ。どうせオレしかみな……」 言い終わる前に、御凛のしなやかな脚が三日月の軌跡を描いて消え、その衝撃でルシアの意識は飛んだ。
「で。結局は着ているわけだが」 顔面強打の気絶から復帰したルシアは、御凛の姿を見てつぶやき、満足気に笑みを浮かべる。 これでもかと言うぐらい顔を真っ赤にして、御凛はルシアを睨んだ。 「うっさい。折角作ってくれたんだし、一回ぐらいは着てあげないと服だって可哀想じゃない」 そう言いつつ、恥らうようにスカートの裾を押さえている。やはり、短いのが気になるようだ。 「で、どうなのよ?」 御凛が消えそうな声で訊ねるのを聞き逃さず、ルシアはしれっと答える。 「可愛いに決まってるだろう。オレの目に狂いはない」 ますます、御凛の顔が朱に染まる。 「じゃ、サンタからのクリスマスプレゼント」 一瞬の躊躇の後、御凛はルシアに唇を重ねた。柔らかい感触が軽く触れ、すぐに離れる。 「勘違いしないでよね。これはあくまでサンタからのプレゼントなんだからっ」 恥ずかしさのあまりルシアを突き飛ばすと、御凛は部屋から退散した。
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