●『Je t'aime du fond de mon coeur』
銀誓館学園ではクリスマスには様々な催しがあり、ここはダンスパーティ会場。まだ踊っている他の人々の邪魔にならないように2人は片隅に移動して一息つく。 「楽しかったですね」 レイラは覚から贈られた白い胡蝶蘭の花を持って楽しそうに笑った。 「楽しかったけど、ダンスって難しいね」 レイラから贈られた白いカラーの花を持った覚は苦笑を浮かべる。運動が決して得意とは言えない覚は、レイラにリードされつつ必死だったのだ。 「レイラちゃん、実はボクからのメッセージを用意したんだ」 「?」 苦笑を消して、にこやかに笑った覚にレイラは首を傾げる。 「屋上にね」 くすっと悪戯っぽく笑った覚。不思議そうな顔をしたレイラをエスコートしてダンスパーティ会場を後にした。
前を歩いていた覚が屋上へと続く扉を「どうぞ」と紳士的に開く。 「わぁ……綺麗……」 宝石をちりばめたような澄み渡る星空。その光景を目にしたレイラがうっとりと呟いた。 「こっちだよ」 覚が屋上の柵の方へとレイラを誘う。星空に感動しつつも、覚のメッセージというのが何なのか分からないままのレイラは、覚に導かれるままに後をついて歩いた。 徐々にグラウンドの様子が見える位置まで歩く。夜のグラウンドには人影はなく、何か光があるような――。 「……!!」 レイラは左手を口元にあてて目を見開いて驚いた。
――Je t'aime du fond de mon coeur――。
グラウンドにはアイスキャンドルで作った文字。これが覚が用意したメッセージのようだ。 「『Je t'aime du fond de mon coeur』、これはね……ボクの生まれ故郷の言葉なんだ。レイラちゃんの国の言葉なら『I Love You』日本語なら『貴女を愛してます』」 微笑みながら言葉を紡いでいた覚が、一度そこで言葉を区切る。言葉を区切って一呼吸ついて、 「レイラちゃん、ボクとお付き合いして貰えますか?」 真っ直ぐレイラの瞳を見ながら告げた。 「あ……えっと……その……」 レイラはその言葉に頬を染め、恥ずかしそうに覚の隣に寄り添う。 「……私の気持ち……不利動さんの隣に……あるかも……です。その……私も……好き」 小さな声で想いを伝えた。
レイラの瞳が輝いていたのは、アイスキャンドルの光だけでないのだろう――。
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