●『今は共にありたいとだけ願う』
この寒い季節、コンビニには様々な中華まんが並んでいる。定番のものから少し変り種まで。 真と冬夜は一緒に入ったコンビニで色々と買い込んできた。そのまま公園のベンチで休憩をしながら、温かいうちに中華まんを食べる事にする。 「そっちのも美味しそうですね。少し交換しませんか?」 冬夜が食べようとしていたあんまんを半分に割って、真に差し出した。 「はい。いい、ですよ」 真は自分の食べていた肉まんを半分に割って渡そうとするが、 「いや、私は4分の1でいいです。半分でも3個分ですよ、さすがに食べられませんよ」 少し遠慮がちな苦笑を浮かべる。お互いに1つずつなわけではない。色々な味全てに心惹かれて『買い込んできた』のだから。 「え、余裕、ですけど……?」 真は冬夜の言葉にきょとんとした。育ち盛りの男子中学生であれば、確かに余裕な量なのかもしれない。 「……昔はそんなに食べていなかった気がしますが」 冬夜は苦笑したまま、何処か懐かしむような雰囲気を言葉に乗せる。 「あの頃も……星空を見ながら語り合いましたね……」 自分で言った『昔は』の言葉に、冬夜は遠い昔に思いを馳せた。 「でも、どこか急いでいた気がします」 当時を思い出して、苦笑した冬夜。 「……」 当時を懐かしむ冬夜の邪魔をしないようにと、真は黙って冬夜の話を聞いた。 「語り合う内容も、いかに勢力を拡大するか、そんな難しい話ばかりでしたね」 やり手と思われていたが、月から地球をのんびり眺めているほうが性に合っていたのんびり屋の冬夜。立場上しょうがないのだが、もう少しのんびりしたかったと思わなくもない。 「自分はあの頃と同じように冬夜様のおそばに……」 どこか寂しげに懐かしむ冬夜に、真が真っ直ぐな瞳で告げた。 「あの頃と同じではないですよ。今は対等な、共に歩む仲間ですよ」 冬夜は穏やかに微笑む。「それより早く食べないと冷めますよ」と付け加えて。 「あ……そう、ですね」 慌てて半分になっている肉まんを頬張る真。 (「そういうところはあの頃と変わらないですね……」) 慌てて肉まんを食べる真を見守りつつ、冬夜も半分になっているあんまんを食べ始めた。早く食べないと真から分けてもらった分が冷めてしまうから――。
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