御剣・風月 & 石薬師・弦

●『ふたりのクリスマスwith猫』

 ささやかではあるが、クリスマスの飾りつけがされた部屋。窓の外ではしんしんと雪が降っていた。
「メリークリスマース! ちょっと早いけど今年も一年お疲れさまだよー!」
 温かな室内に、風月の軽やかな声が響く。
「……ああ、メリークリスマス。……風月さんも店長としての仕事、お疲れ様だ」
 ジュースの入ったコップを掲げ、乾杯、と弦は短く言った。
「お店で皆でワイワイやるパーティもいいけど、こうして二人きりになって過ごすのもいいねぇ……」
 こくりとジュースを一口飲んだ風月が、しみじみとつぶやく。
 小さなテーブルの上には、クリスマスケーキ。ジュースのそそがれた二つ分のコップ、そして温かな紅茶。
 切り分けたケーキを互いに食べさせ合い、他愛ないことで笑い合う――。
(「……幸せ、だなぁ……」)
 大好きな人と一緒にクリスマスを過ごせるなんて、と風月は思う。
(「実家の方にいた時には、素敵な出会いがあるなんて思っても見なかったな。……こういうクリスマスも、悪くない」)
 弦もまた、心の中でひとりごちた。
「――ねぇ弦さん。これ……似合ってる、かなぁ……?」
 不意に風月が、照れ笑いを浮かべながら髪をそっとかき上げながら問う。
 耳に着けられているのは薄雪草をかたどった、繊細な作りのガラス細工のイヤリングだ。
「……そのイヤリングは……ああ、よく似合っている」
 彼女が着けているイヤリングは、以前弦が贈ったもの。着けてくれたのかと、弦は嬉しくなる。
「本当? 嬉しい!」
 満面の笑みを浮かべ、風月は弦に勢いよく抱きついた。
 彼女を受け止める弦の手首には、風月からのプレゼントが。それは赤虎目石に黒曜石が添えられた、数珠のブレスレットだった。
 はしゃぐ彼女の額に、弦はキスをひとつ落とす。
 かけがえのない存在が隣にいてくれる――それだけで、こんなにも幸せな……温かい気持ちになれるのだ。
 風月の幸せそうな笑顔を見ていると、その笑顔をもっと見たくなる。
 難儀なものだと苦笑する弦の膝の上で、猫がにゃあ、と短く鳴いた。



イラストレーター名:光田まみ