●『四度目は、二人で部屋で…♪』
クリスマスの夜。 今宵は誰もが、幸せの空気に飲まれているかのよう。自分もそうだと、みやぴは感じていた。 隣に彼女……、コノハが居るからだろうか。 食材や料理を両手に抱え、二人は商店街を進む。 「あ、あの料理おいしそうだよっ!」 と、あっちこっちの商店街、ないしは店頭に並んでいる料理を目にするたび、コノハは目を輝かせている。 「いや、こんなに買ったんだから、もう食べきれないんじゃないかな?」 とか言いつつ、彼もそれを見て食欲がそそられた。 さらにしばらく、歩き回り。 「……さ、早く帰ろう。ボクおなかペコペコだよう」 「そうだね。ボクもだよ」 コノハとともに商店街を回っていたら、自分も空腹を覚えてしまった。早く帰って、ごちそうにありつきたい。
クリスマスに、コノハのマンションで料理を作り、パーティしよう……と言いだしたのはどちらだったか。ともかく、二人で待ち合わせして、食材や料理を購入しようという事に。 ローストチキンとケーキの他に、少し料理を足せば……と、当初は考えていた。 いまや当初の予定が変更され、かなり多めになりそうだと実感する。 「みやぴちゃん、ポテトサラダは?」 「ん、あとはこれをつぶし混ぜればオッケーかな」 じゃあそれやるよと、コノハはマッシャーで蒸かしたジャガイモを潰し始めた。 みやぴはその間に、オーブンに入れたローストチキンの具合を見てみる。 いい感じだ。香ばしい肉の焼ける匂いが漂い、食欲を刺激した。 つまみ食いしたくなる衝動を抑え、チキンを取り出し皿に盛りつけると……次の料理に取り掛かる。 肝心要、今夜はこれが無いと始まらない料理。……そう、ケーキ。 「二人で、焼いてみよう……♪」 それを思うと、心が躍り、うきうきしてくる。浮かれ気分になるのも、こんな時くらいは良いだろう。 「コノハ。どんなケーキにしたい?」 「うんっ、みやぴが作るのなら、どんなんでもいいよっ」 あれこれと二人で相談しつつ、完成したケーキは……オーソドックスな、イチゴショート。 けれど、どこのケーキ屋のものよりも美味だろうと、みやぴは確信していた。
ローストビーフとスモークサーモン、ロブスターのテルミドール、ガーリックトーストにカナッペ、テリーヌ、クリームシチューにラザニア。 「……あははっ、ちょっと、作りすぎちゃったかなっ……」 「……はははっ、そうだねぇ……」 テーブル上を席巻しているは、二人分以上の、大量のごちそう。 けど、それすらもなぜか嬉しい、楽しくて仕方がない。 そんな、クリスマスの魅力に、二人は見つめ合い……微笑む。 「「メリークリスマス!」」 コノハとみやぴは、同じ言葉を口にしつつ、シャンパングラスで乾杯した。が、みやぴはそれに付け加えた。 「……&、ハッピーバースディ♪」 そう、今宵はコノハの誕生日でもある。 幸せと楽しさとが同居した部屋の中、二人はごちそうにとりかかった。
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