●『大切な人と共に過ごす、輝かしい日々』
クリスマスムード一色の、煌びやかに飾り付けられた繁華街。 すっかりと日が沈み、ライトアップされた通りを歩くのは慎斗とイスラフェル。 「ふふっ、今日は慎斗君を独り占めですわね♪」 満面の笑みを浮かべ、イスラフェルは傍らの恋人に語りかける。 「そういえば、ここのところ二人っきりで過ごす時間が減っていたものな……」 「だから、今日はずっとイスラだけを見ているよ」そう伝えるように、慎斗は寄り添い腕を組んでくる彼女へ微笑みかけ歩きだす。 流行の映画を見て、ショッピングをして、食事をして……。 一日がかりのデートを、イスラフェルは心から楽しんでいた。 (「慎斗君と一緒に過ごす時間は、普段の何倍も素敵な物だと感じますの」) ……一昔前は、こんなに楽しい時間を過ごせるようになるとは夢にも思わなかった。 それは、銀誓館学園に来て沢山の人と出会い、そして……愛する人と巡り会えたから。 (「本当に、幸せすぎて怖いぐらいですわね」) だからこそ、この掛け替えのない日常を全力で守りたい……。 イスラフェルは、改めて決意するのだった。
「――イスラ、今日はどうだったかな?」 「えぇ、とっても楽しいですわ」 美しい銀髪の少女は、慎斗の問いに一点の曇りもない笑顔で答える。 隣で微笑んでいるイスラフェルを見ていると、慎斗は自分が本当に幸せであると実感する。 (「自分と共にいて、そのことで喜んでくれる人がいる……」) それは、どんなに願っても得難いこと。 大切にしよう。そして、共に歩んでいこう。 (「君となら、きっとできると信じている」) 「……ほら、こっちの方がもっと温かいよ」 「し、慎斗君……」 イスラフェルの体を引き寄せると、少女は頬を赤くして恥ずかしがる。 ――真冬の寒さの中でも、触れ合ったところは温かい。 たとえ二人の行く先に苦難が待っていたとしても、互いに相手を大事に思い、守ろうとするなら乗り越えていけるだろう。 そんな風に、慎斗とイスラフェルは大事な人の温もりを感じながら確信するのだった。
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