琴月・ほのり & 黒瀬・和真

●『大切な君と過ごすクリスマス』

 綺麗なクリスマスのイルミネーション。
 琴月・ほのり(鳳翼の詠媛・b12735)と黒瀬・和真(黒のレガリス・b24533)の二人は、クリスマスの夜にそれを眺めにやってきていた。
 前々からの約束。
 それが楽しみで仕方なかったほのりは、今、ちょっとだけ無理していた。
 なぜなら、少しだけ体調が悪い。
 それでも、ここに来たかったのは……。

「やっぱり綺麗だね」
「はい、今年のクリスマスもとっても素敵なのですよぉ〜」
 こうして、和真と過ごす時間が、ほのりは嬉しい。たとえ、体調が本調子でなくても、この楽しい時間が続くのならば、無理だってしてしまうのだ。
 だが、それもつかの間。
 それに気づかない和真ではなかった。
「ほのり、顔赤くない?」
「え? 光りです、よ?」
 あわててほのりは、顔を逸らす。
「違うって。熱あるんじゃない?」
「和真にお熱、ですからねぇ♪」
 なおもほのりは、誤魔化していく。
「ほら、やっぱり熱ある! やっぱり帰ろう」
「これくらい、大丈夫ですよぉ〜」
 平気ですというほのりに、帰ろうという和真。言い合いは平行線なまま。
 このまま2人でイルミネーションを見て過ごしたいほのり。
 体調が良くない彼女を心配する和真。どちらかといえば、和真の言い分の方が正しいだろう。だからこそ……。
「じゃあ……ほのりだけ、ここにいればいいじゃない」
 とうとう和真が怒ってしまった。
 人混みから離れていく和真の背中が、どんどんとほのりを不安にさせる。
 何も考えられなくなるのは熱のせいだけじゃない。
 ほのりは、慌てて和真にしがみつく。

「やっ! ごめんなさい……私、和真と一緒にいたかったから……」

 それがほのりの本心からの言葉。
 和真はそれを痛いほどわかっていた。
「……僕はずっと、ほのりと一緒だよ」
 ゆっくりと振り返り、そして抱きついていたほのりをもう一度、抱き締めた。
「僕はクリスマスの時間よりも、ほのりが大事だから」
 心配するが故の行動。それもほのりは痛いほどわかっていた。
「ん……ごめんなさい……」
 和真はそっと、ほのりの涙を指で掬うと。
「心配かけたバツとして」
 和真はひょいっとほのりを抱き上げる。いうなれば、お姫様だっこだ。
「このままで家に帰ること」
「え、ええっ〜!?」
 人目が多いこの路地で、お姫様だっこをするカップルが歩いていく。
 今夜も、二人にとって思い出深い夜になりそうだ。



イラストレーター名:潮澄アヤ