宮城野・澄雪 & メモリア・フォルゴーレ

●『聖夜の逢瀬は決戦の舞台』

 ――ヒュン!
「当たりませんよ」
 放たれた弾丸を余裕な表情でかわすメモリア。
「甘いぜ!」
 メモリアが避ける事を予想し、すかさずその方向に続く弾丸を放つ澄雪。
 ――バシッ!
「……っ!」
 目論見が成功した澄雪はにやりと口元を歪める。
 ――ボス!
 澄雪の視界は突如真っ白になった。
「油断大敵です」
 メモリアが凛と言い放つ。

「力になれないか?」
 少年は放っておけなかった。10歳の少女を。
 少女は生粋の貴種ヴァンパイア。だから見た目より数倍年齢が上なのかもしれないが。
(「澄雪先輩が私の力になりたいという事は……」)
「それは、私の伴侶になりたいと?」
「……あぁ」
 少女が問いかけると、少年は真っ直ぐな瞳で答えた。見た目通り10歳の少女の伴侶というのは早すぎる話だが、少女は自分より余裕で年上のような気もするし問題ないだろう。
「では、力を示してくれませんか?」
 少女は真っ直ぐ少年を見て毅然と答えた。
「どうやって?」
 真剣な眼差しで問う少年。
(「生涯の伴侶と認める為……」)
「決闘です」

 決闘の舞台は真っ白な雪原。1対1の雪合戦という名の決闘。
 両者一歩も退かぬ激しい攻防。『己の全力を以て生涯の伴侶足り得るかを示す』意味合いの決闘なのだ。手抜きなどできる筈がない。
 2人の激戦は長時間に及び、高かった陽も随分傾いている。
「これで……最後だ!」
「終わりです!」
 ――バシン!
 ――ドサッ!
 両者同時に放った弾丸はお互いにクリーンヒット。2人は同時に雪原に倒れた。
「……はぁ、はぁ……」
 背中から仰向けに倒れたまま荒く白い息を吐き満身創痍の澄雪。
「認めます。澄雪の力……」
 メモリアは起き上がることもままならなかったが、澄雪の方に体を向け、荒く白い息を吐きながら告げた。
「齢10にして……良い伴侶を、得ました……」
 荒い息を整えながら、満足そうに呟くメモリアの言葉に澄雪は驚きに目を見開く。
「……え、マジで10歳?」
 自分よりも年上だと思っていた少女が本当に見た目通り10歳だったとは。
「そうですよ澄雪」
 メモリアは「何を今更」と言うようにさらりと答える。
「……ぁー、人生詰んだかなあ……」
 両者成人してからの7歳差というのは、そこまで気にならないとしても、17歳と10歳の年の差は流石に犯罪の匂いがしないだろうか。
 それはメモリアも勿論分かっている。だから、
「……なら、私が大きくなるまで待って頂けますか?」
 少し恥ずかしそうに、それでいて、本当に10歳の少女らしく可愛くはにかんだ笑顔を見せた。
 その表情に少しどきりとした澄雪。
(「まぁいいか」)
「……あぁ」
 澄雪が答えると、2人同時に晴れ晴れとした顔で茜色に染まりだした空を見上げた。
 ――2人の顔が赤いのは寒さ以外のせいもあるのかもしれない。



イラストレーター名:龍