●『聖夜の朝は……』
「……おはよう」 寝ぼけ眼のまま、食卓に座るリヴァル。テキパキと朝食の準備をするアキを目で追う。 「あ、おはよう。トーストとコーヒーにしたけど、それでいい?」 その声に振り返ったアキは、アキの白いワイシャツを着たリヴァルの声に、にっこり笑った。 「……うん」 頷いたリヴァルは溢れてくる欠伸をかみ殺そうとしたが、いいや、と思い直し大きく、 「ふぁぁ……」 気の抜けた声を上げた。 昨夜は聖夜。2人がちょっとだけ大人になった夜。少しだけ冷たい空気をストーブが暖めている、そんな朝。 「大丈夫?」 「……うん、平気よ」 湯気の立つ暖かいコーヒーを差し出しながらアキが口を開いた。リヴァルはにこっと笑って年上の余裕を見せる。 リヴァルにコーヒーを手渡して、一通り朝食の準備が終わったアキがテーブルについた。 付き合って2年。そう考えれば少し遅いかもしれないと思わなくもないが、リヴァルには何とも言えない気恥ずかしさや照れや――まぁ、要するに複雑なオトメゴコロが胸の内を占めていた。 (「……にしても、いつもと変わらないって、ちょっと腹立つわね……」) 自分だけドキドキしているようで癪に障る。そんなリヴァルに悪戯心が芽生えた。 「夕べの事、思い出していて」 「あ、うん」 その言葉でほんの少しだけ頬を染めたアキが、照れ隠しにコーヒーを含む。 「アキくん、ホント、おっぱい好きだなぁって」 リヴァルがにっこり笑いながら口を開いた。 ――ぶっ! 盛大にコーヒーが吹き出された。 けほけほと咳き込むアキを見て、あはははは、とリヴァルが楽しげな笑い声を上げる。 「ほら、あれもそれもこれも、リクエスト多かったなぁって」 「……あ、いや、その」 真っ赤になって慌てるアキ。 「それに……」 その姿が面白くなったリヴァルは、指折り夕べの事を説明する。 「も、もう……勘弁して……」 アキは、もう降参だとテーブルに突っ伏した。
そんな、ちょっと大人になった2人のいつもと違う朝は、楽しい朝でもあった。
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