●『雪降る夜の静寂の中』
風が窓を叩いた。 それは、無理に言葉にすればハタハタといった程度の、小さく柔らかい音だった。しかし、思わず顔を向けるには十分のタイミング。 「あ、雪……だね」 そらが呟く。 ほんのわずか一分前まで、顔が上気するほど夢中で話していた。
これはプレゼントも渡しあい、美味しい食事も食べ終わった後のことだ。 ちゃんと座っているのも面倒くさく、一人で床にごろごろするには寒い季節、二人は毛布を被って柔らかいベッドの上にいた。お互いの体温が冬の寒さを溶かし、大きな笑い声は夏のような暑さをも心に感じさせていた。 その余韻が顔をほてらせ、息が切れるほどの笑いの後、一息ついた僅かな時間に、風が窓を叩き、そらは窓の音に目をやったのだ。
「本当だ、雪だね」 來那も頷くと、二人は冷ややかな景色に惹かれてもぞもぞと動いた。毛布を持ち上げて窓に近づく。 しかし、やはり毛布を剥ぐと冷気が体を包んで寒かった。二人は鳥肌が立って、慌てて毛布を掴んで逃げ込んだ。二人は窮屈な毛布の中でお互いの頭が衝突し、顔を付き合わせた。それがおかしくて、二人は再び大笑い。またすぐに体が熱くなった。 狭い毛布の中で、二人は折り重なるように手足を伸ばす。來那がそらを気遣うように体を引き、出来た空間を使ってそらが体を捻る。毛布を上手に二人で被って、頭だけをひょこりと出した。 「うん……あ、寒くない……?」 來那がそらに聞く。耳元で囁く形になって、そらはくすがったそうに身を縮めた。 くすくすとそらは笑ってから、來那の腕の中へぽすんと頭を投げた。慌てて受け止める來那に向かって、そらはすっと視線を上げた。 「ん……だいじょうぶ。抱きしめてて、くれるから……」 さっきまでふざけていた表情が一変して、そらはまっすぐと來那の瞳を見つめ返した。 そらの言葉に対して、來那ぎゅっとは抱きしめる腕を強めて答えるのだった。
雪がしんしんと降り、夜が更けていく。 二人は窓辺でそれを見つめながら、同じ姿勢で眺め続けた。
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