●『ふたりで過ごす2度目の聖夜』
緩やかに流れる音楽。幸せそうな笑顔。色とりどりの華が咲く。 純白の華は閃紅に導かれ幸せそうに咲いていた。 「少し休憩するか」 曲が途切れ、灯夜が微笑みながら口を開く。 「はい……」 雪菜は頷いて、2人はソファに移動し、寄り添って寛いだ。 「俺が忙しいせいで雪菜には寂しい想いをさせてしまっているな……」 灯夜が苦笑を浮かべて申し訳なさそうに呟いた。 学園を卒業した灯夜は大学に通っている。大学生活が忙しい灯夜は雪菜と共に過ごせる時間をなかなか作る事ができない。それが雪菜に申し訳なくてしょうがない。そして、相手に寂しい想いをさせていると感じるのは、自分も寂しいからで。 「大丈夫。灯夜が頑張って時間を作ってくれているのは分かっているから」 雪菜は安心させるように、にっこりと微笑んだ。確かに寂しい。でも、灯夜が自分の為に時間を作ってくれるのが分かるから、寂しさよりも、一緒に居られる幸せの方が大きい。だから大丈夫なのだ。 「そうか……有難う……」 安心したように微笑んだ灯夜。微笑んでいるが目が眠そうである。日頃の忙しさに、雪菜と共にいる事で安心して、眠気に襲われているのだ。 それに気付いた雪菜が、ぽんぽん、と自分の膝を叩いて、 「ねえ、少し横になってみたら?」 にこっと膝枕を提案する。 巫女のひざまくら。土蜘蛛である灯夜には何とも魅力的な提案であるか。 雪菜の気遣いに嬉しそうに目を細めた灯夜は、雪菜をそっと抱きしめる。その背をぽんぽんと雪菜が優しく叩くと、灯夜は誘われるままに膝枕で横になった。 自分の膝で気持ち良さそうに寛ぐ灯夜を眺めていた雪菜も、つられるようにウトウトと眠りに落ちる。 「スー……また来年も……クー……二人で……スー……過ごそうね……クー」 ふと、その雪菜の寝言で目を覚ました灯夜が、 「ああ、来年も共に過そう」 囁いて起き上がる。そのまま自分の上着を雪菜にかけ、頭を優しく撫でながら自分の膝に横たえさせた。
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