●『君といつまでも…』
銀誓館学園では毎年様々な趣向のクリスマスパーティがある。鏡介とリリアーヌが選んだのは綺麗なソーダ水を楽しむパーティだ。2人は寄り添うように腰を下ろした。 (「友達とかと一緒ならメロンソーダにするけど……」) 隣のリリアーヌをちらりと横目で見た。 楽しそうににこにこしながらメニューを見つめている。 ――さらり。 綺麗な金色の髪が一房さらりと落ちた。メニューを見つめたまま落ちた髪を指で耳にかけるリリアーヌ。その姿に鏡介はドキリと胸が高鳴る。 (「子供っぽく思われるからメロンソーダはやめておこう」) 年上の愛しい彼女につり合うように少し背伸びをする事にした。
鏡介の前のグラスは穏やかなブラウンで中には気泡がいくつも踊っている。メロンソーダをやめて『少し背伸びをした大人の気持ち』のティーソーダを頼んだのだ。 「メリークリスマス」 「メリークリスマス」 カチンと小さくグラスを乾杯させる2人。 (「……何これ? すごく苦い……」) 「う、うん、これが大人の味かな……」 ぼそっと呟いた鏡介。少し早かった大人の味に、やや引き攣った笑顔になってしまう。 その引き攣った笑顔に気付いたリリアーヌが、 「どうぞ、鏡介さん」 そっとガトー・オ・フレーズを一口フォークに乗せて鏡介に差し出した。 「え、えと……」 これは、恋人同士でやる『あーん♪』というアレであるのかと、緊張気味でケーキを見つめる鏡介。勇気を振り絞ってぱくっと口で頂く。 「うん、とても甘くて美味しいね」 にこっと笑顔を浮かべる鏡介。先程の大人の味にまだ早いと少し後悔しただけに、この甘さはとても幸せだ。食べさせてくれたのがリリアーヌなのだから、更に幸せ。 「鏡介さん、クリームが。今取りますわね」 鏡介の口元にクリームがついていたのを気付いたリリアーヌが口を開く。言うなり、すっと鏡介の首へと腕を回し、そっと口でクリームを取った。 「……」 (「え、えと……」) 突然の事に少し驚いて動きが固まってしまった鏡介。しかし、すぐにリリアーヌの背に手を回し、 「何時までも一緒に居ようね……」 「ええ、いつまでも」 微笑んで囁いた鏡介を真っ直ぐ見つめて、リリアーヌは幸せそうに微笑んだ。
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