●『聖なる夜をあなたと』
「テ、テーブルマナーとかおかしくあらへんかったかな?」 「大丈夫、問題なかったさ。心配性だな」 少し心配そうにする鼎に、マオがやさしく微笑みかける。 「あれ美味しかったやんな、家でも作れればマオはんに振舞えるんやけれど……」 「嬉しい事を言ってくれるぜ。俺も手伝うから今度二人でやってみるかい?」 クリスマスディナーを堪能した後そんな風にたわいのない話をしながら、マオは予定していたデートスポットである広場へとエスコートする。 クリスマスらしく夜道はライトアップされ、ゆっくりと降る雪は灯りを受けてキラキラ輝いている。 「ふふ、去年はキャンドルリースを二人で作ったんよね。もうあれから一年かぁ……」 「ああ、あれは楽しかったな!」 しみじみ呟きながら足を進める鼎。 (「もうそんなに経つのか。一年なんかあっという間だが……」) だからこそ、かけがえのない人である鼎と大切な時間を過ごしたいと思う。 そんな風に決意を新たにしたマオは、広場の中央、ここの目玉である巨大ツリーの前で歩みを止める。 「着いたぜ。どうだい?」 「すごいすごいっ! めっちゃ綺麗どす……!」 (「きらきら光っとるし、大きいし、飾りもあんなに付いとって……一度見たら忘れられそうにないわ」) 夜の闇を塗り替えるかのように、鮮やかな輝きを放つクリスマスツリー。 目を丸くして見上げた鼎は、その幻想的な光景に自然と笑みが浮かんできてしまう。 「良かった。これでもかなり悩んだんだ。喜んでもらえて良かった」 大事な女性の反応にマオが会心の笑みを浮かべ、鼎に微笑みかけつつそっと寄り添う。 (「今年も一緒に居てくれておおきにな、マオはん」) 「来年もよしなに、やよっ♪」 「愛してるぜ――」 爪先立ちで高さを合わせ、鼎はマオの頬にキスをする。 頬に受けた鼎の唇の感触に照れくさそうに笑ったマオは、最愛の女性へ思いを告げながら抱きしめ、熱く口付けを返すのだった……。
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