藤梨・かがみ & 九鬼・桜花

●『Secret Christmas 〜聖なる夜の恋人達〜』

 きゅぽんと、瓶の栓を開ける。
 あふれるのは、甘い香りと、しゅわしゅわと音を立てる、クリスマス用のフルーツサイダー。
 二人のグラスに入れて、いざ。
「「かんぱーいっ!!」」
 桜花とかがみは、お揃いのパジャマ姿で二人っきりのクリスマスを過ごしていた。楽しげにサイダーを傾けながら、ケーキを取り分ける。
「とうとう、この日が来たわね」
 嬉しそうに桜花は瞳を細めた。二人にとって、今日は特別な日であった。
「はい、特別な……クリスマスにしちゃおうなのです」
 僅かに頬を染めながら、かがみも嬉しそうだ。
「あ、そうそう。今日のケーキ、ちょっと奮発しちゃったのよね。どんな味かしら?」
 桜花がわざわざ予約して、並んで買ってきたものだそうだ。
 かなり期待が出来そうである。
「いただきますなのです」
 そっと端を切って、口に運ぶかがみ。
「「!!!」」
 程よい甘さが、口の中に広がって、とろけていった。
「美味しいのですっ!! 桜花、ありがとうなのですよ」
「いえいえ。可愛いかがみの為だもの。かがみが笑ってくれるだけで充分。それにしても……本当に美味しいわね」
 桜花も一口、また一口と口に運んで。
「あら、かがみ。ほっぺにクリームが」
「え? あら、やだなのです……」
 ごしごしと傍にあったティッシュでふき取るも、鏡の前で取ったわけではないので、まだ口の端に残っていた。
「取ってあげる」
 ぺろっと、桜花はその舌で、かがみのクリームをすくい取った。
「お、桜花っ……」
 慌てふためきながら、かがみは顔を真っ赤にさせる。
「もう、本当にかがみは可愛いんだから」
「ちょ、桜花っ」
 堪らなくなって桜花は、そのままかがみを抱き上げ、ベッドに乗せてしまう。
「かがみ、あいしてるっ!!」
 ぎゅっと桜花に抱きつかれて、かがみは驚きながらも、そっと身を彼女に委ねた。
「桜花……大好きなのです。ずっと……ずっと一緒なのですっ!!」
 互いの気持ちを叫びあいながら、愛を確かめていく。
 確かなぬくもりが、いつの間にか唇の熱に変わっていた。
 何度も唇を重ね、足りないと言いたげに長い口付けを交わしていた。
 二人が抱き合っていた所為だろうか。
 体の火照りを冷ますかのように、二人の服は一枚ずつ、ベッドの下に落とされていく。
 彼女達の甘い時間は、始まったばかり。
 外では雪が舞うホワイトクリスマス。けれど、部屋の中は二人の熱で、何時にも増して暑く感じられたのであった。



イラストレーター名:秋山徹