●『More Cat Christmas』
「今日が誕生日なんだよね、おめでとう! 少しは喜んでもらえたかな?」 いつもお世話になっているユゼン先輩にお礼と誕生日のお祝いを兼ねて、一は彼女を猫カフェに誘ってみた。 選んだのは保護猫の里親探しも兼ねている猫カフェで、ただ可愛いだけの所よりも喜んでくれると考えたのだ。 「あのね、ユゼン先輩にはずっとお礼が言いたかったんだ。屋敷の人、一人ひとりにちゃんと目を配ってる、そんな感じがして……だから、ボクはそんな先輩のことが大好きになったんだ!」 ユゼンの笑顔を見ているとこみ上げる想いに動かされ、一は勢い任せに告白めいた言葉を口にしてしまう。 先輩の方も、一の激白に思わず真っ赤になり、照れ隠しに周囲の猫達へ埋もれていく。 「ん、わたしも、大好きだよ、はじめ」 「は……はいっ!」 お互いに赤面し、言葉を捜してもじもじしてしまう。 「……あ、えと、せっかくだから一匹もらっていこうかな?」 何か別のことを、と話題を探す一が、周囲をキョロキョロと見回す。 「それじゃ、この子なんてどう?」 ユゼンが優しげに微笑し、口周りが白い赤茶トラ猫を抱き上げて手渡す。 「ありがとう」そういって受け取った一は、もうひとつお願いを。 「名前なんにしよう? よかったら、先輩つけてくれないかな?」 「猫さんのお名前かー。……ふと思いついたものだけど、ラウスとか、どうかな?」 サンタニコラウスならぬ、ネコラウス。 クリスマスに相応しいといえる命名である 「ラウスかぁ……! よし、その名前もらった! これからよろしくね、ラウス!」 大好きな先輩がつけた名を持つトラ猫を、一はきゅっと抱きしめるのだった。
「今日はありがとう! ラウスのこと、先輩だと思って大事にするから!」 「今日は素敵な時間を、ありがとう、わたしのサンタさん。――メリークリスマス」 やや大げさに言う一に、ユゼンも今度はまっすぐ見返して満面の笑みを浮かべる。 こうして二人と一匹は、年に一度の特別な日を、大事な人と素晴らしいひと時として過ごすのだった。
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