啄身・鶫 & 船見・窓日

●『光と音に、思い出を重ねて。』

 赤、青、黄色に緑――様々な色に点滅するイルミネーション。
 互いに贈りあったプレゼントの小箱を手に光の絵画を眺めながら、鶫と窓日はこれまでの思い出語りをしていた。
「書道部の皆さんと行ったお祭り、とても楽しかったですね」
 行き交う人々、並んだ屋台。そして金魚すくいですくった、白星の緋金魚。
「あれから少し経って、金魚も大きくなりましたね」
 水槽の中で泳ぐ金魚を思い、窓日は微笑んだ。
「月見に行ったこと、覚えてるやろか」
 鶫は彼女と見た中秋の名月を思い返す。夜空に輝く満月は、それは見事なものであった。
「ええ、もちろんですわ。とても素敵な晩でしたもの」
 肯定する窓日。鶫はふと思い出す。
(「そういや、あの時……」)
 月を眺める窓日の横顔を見てこぼれた言葉が蘇り、鶫は思わず赤面した。
 そんな彼の様子に、窓日は小首を傾げる。
 不思議そうな表情を浮かべる彼女にも思い出させるためか、鶫は言葉をぽつり。
「あの月は、本当に綺麗やったな……」
 その言葉で、彼が何を思い出し赤面したのかを理解し、窓日もまた頬を赤く染めた。
 窓日は、自身を落ち着かせようと小さな深呼吸を数度繰り返す。
 そして熱い頬を気にしながらも、ごまかすかのように話題を変えた。
「そうそう、草花遊びは覚えていらっしゃいます? 来年もワレモコウ、探しにいきたいですね」
「そうだな」
 彼女から教えてもらった物語を思い出し、鶫は微笑みながら頷く。
「この間の皆既月食も、綺麗やったな」
 九月に見た金色の月とは違う、赤色の月。
 隣にいたのは同じく彼女であったというのに、あの月は、秋とは違う顔を見せてくれた。
「あの時はいろんな月を、と言ったが……月だけじゃなく、色んな景色を見られたら嬉しいと思う。……ああ、もちろん窓日が――」
 迷惑じゃなければ、と言いかけた口に、パーティーで出されたクッキーをそっと押し込まれる。
 少々驚いて窓日を見やれば、彼女はいたずらっぽい微笑みを浮かべていて。
「来年も、色んな所へ誘ってくださいね?」
 鶫は急いでクッキーを噛み砕いて飲み込むと、「もちろん」と言葉を返した。



イラストレーター名:赫之参