秋月・信乃 & 宮原・瑞穂

●『Like a Wedding』

「えへへ、どうかな、信乃君」
 二人きりのクリスマスパーティ。
 奮発してとった高級ホテルの眺めのいい部屋にいたのは、可愛らしい美少女サンタ。
 ノリノリでサンタクロースの衣装に身を包んだ恋人の瑞穂。
 なのだが……。
「可愛い。凄く可愛い。……けど」
「?」
「――そこはミニスカでしょ!?」
 どうどう? と見せ付けてくる瑞穂に、思わずツッコミを入れる信乃。
 サンタの格好をすると聞いて彼が想像していたのは、太ももバッチリのミニスカサンタ。
 しかし、実際に出てきたのは長ズボンで露出ゼロのノーマルサンタ。
「えー、こっちの方が可愛いでしょ?」
「男の、男のロマンが……」
 大げさにしょげてみせる信乃。よほど期待で胸を膨らませていたらしい。
「まーまー。今度、今度は信乃君の好きな格好してあげるから」
「お、おう……!」
 そんな風に、約一名にとって予想外のアクシデントがありながらも、恋人同士のクリスマスパーティは始まった。
 綺麗な夜景に美味しい料理、豪華なケーキ。
 今日という日にふさわしい『特別』の数々が、二人の間を盛り上げる。
 そうして、ひと通りクリスマスを楽しんだ後には、本日のメインイベントであるプレゼント交換だ。
 品物は、二人がお互いのために用意した指輪。
「信乃君のもの……。いつでも持っていたいんだ」
「俺も、この指輪は肌身離さず着けておくよ」
 うっとりと呟きながら、いとおしげに指輪を撫でる瑞穂。
 そんな彼女のことが愛らしくてたまらないと、信乃は瑞穂の体を優しく撫でる。
 そのまま抱きよせようとするより先に、瑞穂から信乃に抱きついてくる。
 華奢な柔らかい体。鼻先をくすぐる髪からはかすかな甘い香り。
 触れ合うだけで幸せでいっぱいになっていく。
「「……なんだか結婚式みたいだね」」
 二人同時に呟き、お互い顔を見合わせながら照れ笑い。
「これからも、二人で仲良くやっていこうね」
 信乃は瑞穂の、瑞穂は信乃の。お互いの瞳を見つめ合いながら、そう約束するのだった。



イラストレーター名:東原史真