●『[ 幸せ家族計画 ]新しい家族とクリスマス』
出会って3年目のクリスマスに指輪を贈った。 それから幾度も幾度も、大切な思い出を積み重ねて――亮とシャズナは、また今年もクリスマスを迎えていた。 「ただいまー!」 リビングへ戻ってきた亮は、不思議そうにしているシャズナへ、にんまりと笑った。 亮が抱えているのは大きなキャリーバッグに、これまた大きな紙袋。ひとまずこれはこっちへ、と紙袋を置いて。亮はキャリーバッグをシャズナの前に置いた。 「じゃーん! 3匹も連れて来ちゃった!」 そうして取り出したのは、3匹の子犬たち! どこか凛々しいキャバリアの子犬がおねえさん。早速くつろぎはじめたチャウチャウの子犬がおにいさん。ちょっとやんちゃボーイなシェパードの子犬が末っ子。 「ね、ね、どの子もかわいいでしょ、シャズナ!」 シェパードくんに引っかかれても、亮の顔はでれでれっとしている。 だって念願だったのだ。去年はちょうど、シャズナと婚約してから3年目。節目の年だから新しい家族が欲しいねって、シャズナと話していたけれど、ちょっとお金が足りなくて……。 1年遅れたけど、こうして新しい家族を迎えられたのだ。それも一気に3匹も!
シャズナが持ってきてくれた救急箱からガーゼを出し、頬の傷を手当てしていると、その間にシャズナはシェパードくんと向かい合っている。 真剣な顔で「めっ!」と指を立てるシャズナに、真摯な顔つきで頷くシェパードくん。 その様子を見ているだけで、もう亮の顔はニヤけていくばかり。 「あ、そうだ、飼育の本とかも買って来たんだ。俺もシャズナも、わんこ飼うの初めてでしょ? 名前もみんなに自慢できるのを考えてあげないとね。ええと、あとこれが餌でー、茶碗で、ブラシもあるし、それから……」 ふと思い出して紙袋を手繰り寄せる。中身は、勿論この子たちの物ばかり! あれやこれやと床に並べ、亮は『はじめてのこいぬ』を開く。 ……けど、トコトコやってきたキャバリアちゃんが亮の膝に乗っかって。かと思えばシェパードくんが飛びついてくるから、本はガタガタ揺れるばかり。 「ははは、遊んで欲しいのか?」 仕方ないなと、でも満更じゃない顔でシェパードくんを抱え上げると、嬉しそうにはしゃぐ前足が亮の顔を掠めて。当てたばかりのガーゼが早速ズレてしまう。 「……!」 チャウチャウくんと遊んでいたシャズナが、それを見て「亮くん、大丈夫!?」と言わんばかりに駆け寄ってくると、新しいガーゼを出して、そっと傷の場所へ貼り直す。 「ん……ありがとう、シャズナ」 こみ上げる嬉しさに笑う亮。そのまま、シャズナとじっと見つめ合う……。
と、吼え声がした。かまってー、かまってーとせがむように、亮やシャズナにじゃれつきながら。 「よし。じゃあこれで遊んでみるか」 買ってきたオモチャを手に、亮はシャズナへ目配せする。 どうやら、彼女と2人だけの時間は、この子達が寝静まるまでお預けのようだ。
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