●『雪より白く、炎より紅く』
時刻は夜。 良と小織が共に住むマンションのリビングに、帰ってきたばかりの二人の姿。 辺りはしんしんと降り積もる雪のせいか、はたまた時刻のせいか、しんと静まり返っていた。 良はコートを脱ぎ、パーティー用のフォーマルジャケットの前を開ける。 さっきまでの銀誓館での賑やかなダンスパーティーを回想すると、楽しかった気持ちまでよみがえるようだった。 「小織、大丈夫?」 コートに付いた小さな氷の粒を見て、今年のクリスマスイヴも雪になって綺麗だったけれど、帰り道で少し冷えてしまったかと小織を気遣う。 小織は良に選んでもらった黒基調のスリット入りドレス。 良が振り返ると、灯りを付ける前の薄暗い部屋の中、自分が選んだドレスを着た小織の肌がとても白く、綺麗で。 「小織、やっぱそれ凄く似合う。肌……白いのが映えて……綺麗だ」 「ふふ、ありがと。良もかっこいい。私緊張しちゃった」 寒さを心配する良ににっこりと微笑んで歩み寄ると、こうすれば大丈夫と良の手を握った。 引き寄せられるように、良が小織の腕や肩に触れると、小織の体はとても暖かい。 不意に良から触れられた小織の鼓動も早まる。 良も小織の心が映った様に、頬や体の中が熱くなってきて、思わず想いを口にした。 「……君を想うとさ、いつも胸が暖かくなる。同時に、抱き締めたくて堪らなくなる」 「……だから良の腕の中は暖かいんだね」 いつだって良の胸で、小織への想いの火が燃えているから。
途絶えることなく沸き続ける、この想いの熱量を伝えたいから。 キス、したいな。 良は衝動のまま、小織を抱き寄せてソファに腰掛けると、華奢な彼女を膝に乗せ、喉元に口付けた。小織も照れつつ、口付けを受け入れるように抱き寄せ、良の髪を撫でる。 先程よりも近くなった二人の距離。 「好きだよ……ずっと。昨日より、去年より、ずっと」 そしてそれは、これからも。 良の真っ直ぐな言葉がくすぐったくて心地良い。 「うん、良……大好き」 伝えるたびに深まるような熱い想いは、私も。
| |