●『聖夜に二人で』
街中華やかなイルミネーションを纏い、楽しそうな声や幸せそうな笑顔が溢れている。今宵は年に1度の聖夜。 「もう4年かー……」 「……そうですね」 ここにも幸せそうな笑顔で腕を組んで歩く恋人達。 牡丹が楽しそうに口を開き、零も笑顔で相槌を打つ。 物心ついた時から蟲達と共にあり、そのせいで親戚中をたらい回しにされ冷遇されてきた牡丹。呪われた蟲の一族として迫害されてきた零。 近い境遇の2人が出会い、惹かれ合うのは時間の問題で、もう4年という歳月を共に過ごしてきた。 その4年の間に色々あった。共に戦ったり、共に笑いあったり。 付き合って4年という歳月を過ごしながらも零が純情すぎるせいで、2人の関係はキスまでしか進んでいない。 (「でも、自分から肩を抱き寄せてきたり、キスしてくるって……零ちゃんも成長したな……」) 純情な零にお色気を振りまいて、その気にさせようとしては常に空回りしていた牡丹だが、最近の積極的な零に満足していた。 (「ここまで来るのに、4年かかったけど、まぁ、許してあげる」) そんな思いを心の中で呟いた牡丹が、にっこり笑う。 「……? どうしたんですか?」 牡丹の上機嫌そうな笑顔を見た零が微笑みながら尋ねた。 「なんでもない。零ちゃんとクリスマスにデートできるの幸せだなって」 笑顔のまま答えた牡丹は、絡めた腕にぎゅっと力を込めて更に零と密着する。 「え、あ、あの……」 零の頬が少しだけ紅く染まった。零が紅くなった理由は簡単。腕に強く当たっているのである。牡丹の柔らかい感触が。 その零の顔を見た牡丹は「くすっ」と小さく笑った。 「零ちゃん……」 名前を呼んで、そこで一度言葉を区切る牡丹。 「ずっと一緒にいようね」 にっこりと幸せそうな笑みを広げた。その笑顔に、少しわたわたしていた零も柔らかく微笑む。 「……はい。ずっと一緒にいましょう」 すっと腕を解いて、牡丹の肩を抱き寄せた。その肩に頭をこてんと寄りかからせた牡丹が、 「大好き」 幸せそうに呟く。 「俺も……大好きです」 零は囁いて、ぐっと牡丹の肩を抱く手に力を込めた。
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