●『chrysoberyl&Pole star』
「けっこう積もってるね? ね、ね、雪だるま作れちゃいそうじゃない?」 「ゆっきだるまーゆっきだるまー」 しっかりと降り積もった雪に、年甲斐なくはしゃぐ二人。 雪女である明はともかく、海里の方も興奮して寒さを忘れてしまっているようだ。 童心にかえって雪遊びに興じること小一時間。 「ふふ、ずいぶん大きい雪だるまになったな。折角だから耳つけて、猫だるま、なんてどうだ?」 笑い声を雪の上に響かせながら、二人して『猫だるま』作りに熱中する。 「ん〜、これだけじゃなぁ……。――よっし、手が出来た!!」 「おぉ、可愛く出来たな」 ひとまず出来上がりとなったのを眺めていた海里は、自分の手袋を外して雪だるまに取り付ける。 そうして『猫だるま』の完成を喜んでいたのだが、明は傍らの海里の手が赤くなっているのに気付く。 「――手、真っ赤じゃないか! 寒くないか?」 「え、あ、本当だ。でもだいじょ……」 「手袋使っちゃったからだな。冷たい」 明は海里の手を取って、はあっと息を吹きかける。 「あ、え、あ、ああありがとう!」 「海里?」 しどろもどろになる海里に、明は顔を上げる。 「……っ!」 顔を朱に染めている海里に気付き、同じく明の顔も真っ赤になる。 (「え、ええっと……」) 驚きのあまり硬直してしまい、かえって手を離すタイミングを失ってしまった。 気恥ずかしさをごまかすように視線をさまよわせる明は、少年の指に輝く指輪を発見する。 海里の右手薬指に輝いているのは、先程明が贈った指輪である。 (「それ、つけてくれてはるんや」) (「あ、つけてくれてるんだ……」) 同じく、海里の方も明の指に、プレゼントしたばかりの指輪がはまっているのに気付く。 二人で一緒に選んで贈り合った指輪を、相手が身につけている。 「ふ、ふふ……」 「ははっ……」 お互い、もうクリスマスプレゼントを開けているとは思わなかったと、思わず頬がゆるんでしまう。 そうして二人は互いに顔を見合わせ、照れたように微笑むのだった……。
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