<ホテルいちご貴族>さまよえるテツオ


 1994年頃、まだ「いちご貴族」が営業していた時代の話……。
 とある暴走族のメンバー、テツオは、中学生とのケンカに負け、泣きながら侘びを入れていた。
 「ごめんよぉ。悪気は無かったんだよぉ」
 涙と鼻水を溢れさせながら土下座するテツオは、今が人生最悪の時だと考えていた。

 だがそれは間違いだった。中学生に負けたという事実は、すぐに暴走族仲間に知れ渡ったのだ。
 族の面汚しとして袋叩きにあい、嘲られ続ける人生の転落。
 やがて、昼間に清掃員のバイトで稼いだ金も、仲間に脅され巻き上げられるようになってしまった。

 そんな生活に嫌気がさしたテツオは、自分達のリーダーにケンカを挑み、倒してしまおうと考えた。リーダーはチーム最強で大男だったが、テツオには勝算があった。自分が清掃員をしているホテル「いちご貴族」に、奴が良く女を連れ込んでいるというのだ。夜まで身を潜めた後、合鍵で部屋に押し入って不意を討てば、自分でも倒せるだろう。倒してしまえば、後はどうとでも言いふらせる。

(「そうしたら、サチコも俺の事を……!」)
 サチコは彼の幼馴染であり、恋人である。あの事件以来顔向けできず、何となく疎遠になっている彼女の為にも、テツオは計画を実行に移した。

 深夜。意を決してリーダーが泊まる部屋に転がり込んだテツオ。
 そこでテツオが見たものは……。
 「どうして、サチコ、お前が!!」
 そこには、彼の恋人サチコが、リーダーとよろしくやっている姿が。
 ……そこでテツオの記憶は途切れてしまった。
 最後に見たのは、リーダーの大きな体と、自分の顔面に振り下ろされた硬い拳だっただろうか。

(「俺も、俺も、あんなにデカかったら、人生変わってたんだろうな」)
 今までの人生が走馬灯のように巡る。
 何も良い事が無かった人生。
(「俺がデカかったら、俺がデカかったら、俺がデカかったら」)
 まるで虫ケラのように儚く死んでしまったテツオの、その意識だけが、「いちご貴族」の別棟を、今も白い霧の如く覆い尽くしているという……。
シナリオタイプ:サブシナリオ
公開日:2007年01月22日
総制覇数:235061



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