<きゃっと・ぱにっく>
マスター:永瀬晶
坂田八郎氏の猫好きは近所でも有名だった。ここに引っ越してきた当初より五匹以上の猫を飼っていたのだが、よく捨て猫等を拾ってくるから、彼自身以外は、そこに何匹の猫が居るか正確に知らなかったほどだ。
ある朝三匹の猫が死んだ。彼が泊まりの出張に出かけた時の事だった。
「ただいま」
猫達しか居ない家へ彼が戻ってきたのはその日の夜だった。いつもどおり、ミルクと水とキャットフードを置き、近づいて来た猫を撫でる八郎氏だったが。
リビングデッドと化していた猫の一匹が、彼の喉笛を切り裂いた。
「えっとね、リビングデッドになってしまった猫さんを退治してほしいんです」
藤崎・志穂(高校生運命予報士)が牛乳パックを片手に、単刀直入に切り出した。
いきなり用件だけを告げられた能力者たちが、志穂に詳しい説明を求める。
「沢山の猫を飼っていた坂田八郎という方がいらっしゃったのですが、その飼い猫のうち三匹が、死んでリビングデッドになって、彼を殺してしまいました。家には鍵はかけられていないようなので……彼の家に乗り込んで、三匹を退治し、救ってあげてください」
運命は時に残酷だ。
リビングデッドと化した猫達が、彼らを愛してくれた飼い主を殺し、その肉を食べたのだ。飼い犬に手を噛まれる等という諺があるが、八郎氏は自分が飼い猫であったモノに殺されるなど、夢にも思わなかっただろう。
「この猫達は、普通の猫さんを操る力を持っています……だから、猫さんが彼らに操られてあなたたちを襲ってくるでしょう。できるだけ殺さないであげてください。それに、三匹はもともと猫だから……身軽さを生かして、襲ってくると思います。注意してください」
反面、打たれ強くは無いだろう。もちろん、それ以上に、普通の猫は能力者たちの攻撃を受けたら、あっさりと死んでしまうだろうけれども。
リビングデッドの猫たちは玄関を抜けた廊下の先の、片隅に小さなソファーの置いてある大きな居間、そこから出れる広いベランダの二箇所に居るらしい。ちなみにベランダに出入りできるのは居間からだけで、また高いフェンスがあるから猫達が外に出ることは無いとのことだ。
それから、リビングデッドは、八郎氏の血肉を食べた時、身体の一部に返り血を浴びているから、変色はしていますが、よく見れば普通の猫とは違いがすぐ判ると思います、そう説明を終わると志穂はぺこり、頭を下げた。
「そうだ……もうひとつ、お願いしてもいいですか? あのね、さっき、普通の猫さんが操られていると言いましたよね。その子たちの里親を探してあげてほしいんです。このまま放っておくと、死んじゃうかもしれないから。十匹程です」
できるだけ哀れなゴーストを増やさないようにと付け足すと、志穂はもう一度頭を下げた。
<参加キャラクターリスト>
このシナリオに参加しているキャラクターは下記の8名です。
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