<山頂の梟頭>
マスター:ケエ
白い霧は雨を混じらせてのっしりと山間に圧し掛かる。重い空気は自分まで押し潰そうとするかのようだ。
鳥の鳴き声さえくぐもる中で、登山家はホー、ホー、という梟の声を聞いた気がした。
……まさかな。こんな真昼間に梟が鳴くわけもあるまい。
構わず先を急ぐ。山頂まではもう、あと数分。霧が晴れれば絶景を拝めるはずだ。期待に胸を膨らませて、山を登る。
しかして山頂に着いた彼の目の前に広がったのは、見慣れた絶景ではなく得体の知れぬ絶望だった。鳴り響いた悲鳴はこだまとなって、霧の晴れ行く山中に轟き渡った。
「よう、いらっしゃい。良く来てくれたな」
王子・団十郎(高校生運命予報士)は筋骨たくましい肉体をのっそりと動かして、階段から立ち上がった。
「ある山に妖獣が出ているんだ。今のところ被害は登山家一人。奴は頂上で次の人間が通りかかるのを待ち構えているらしいが、人の味を覚えた妖獣がいつ人里に下りてくるかもわからない。放っておくことは出来ないだろう?」
低くも落ち着いた声色が皆に浸透するのを待って、彼は続けた。
「この妖獣は梟の頭に熊の体を持つ。梟頭は体の見た目通り、体力と腕力に秀でたパワータイプの妖獣だ。近づいて戦う奴は気をつけなくちゃならないな。それと、腕を薙ぎ払って遠距離に衝撃波を放ってくる。直接殴られる方が痛いが、後ろにいれば安心と油断していると痛い目をみてしまうだろう」
体躯に恵まれたことを利用してか、団十郎は腕を薙ぎ払うような軽いジェスチャーをしてみせる。彼はいつも穏やかに動くが、熊の体躯は決して鈍重ではあるまい。暴れ狂う梟頭は、油断できぬ相手のようだ。
「それと頂上にいるってことは、もちろんそこまで登らなくちゃいけないってことだ。この季節でも山は寒いし、天気も変わりやすい。頂上に着くころには天気は安定するようだが、その途中では急な雨もあるかもしれない。山の天気は変わりやすいから、準備はちゃんとしていけよ?」
そこまで言うと、彼は言い忘れが無かったかを少し思案して頭を掻いた。
「……よし、情報はこんなもんだ。それじゃあみんな、くれぐれも気をつけてな」
<参加キャラクターリスト>
このシナリオに参加しているキャラクターは下記の8名です。
|