<水源に潜むもの>
マスター:MH
夏の日差しが差し込む森の中、一人の老人が慣れた様子で川沿いを歩いていた。
目的地は、湧き水の源。
ほんの数日前から、森の水源からひき、町で使用している水が濁り始めたのだ。
そこで、湧き水の管理をしている老人が原因を探ることとなった。
森に入ってから、約二時間ほど歩いただろうか。
水源が近き、それと共に岩場が広がってくる。
老人は一歩一歩、慎重に歩を進めた。
水の流れを、注意深く目で追っていく。
すると、水の淀みが最も酷い所――水源に、見慣れぬモノがあった。
黒く、大きさは人間と同じか、それよりも一回り小さいくらいだろうか。
「ひっ……!」
老人が近づいて覗き込むと、それはサンショウオだった。
いや、正確に言えば、サンショウウオに似た妖獣……。
似たようで違うそれは、頭に角を生やし、六本の足を生やしていた。
そいつが水源に座り込み、体表からでる液によって水を汚していたのだ。
老人の短い悲鳴に気付き、妖獣の顔が上がった。
どっしりとした動きで、老人へと向かってくると、老人は慌てた。
見たこともない生物。生理的に不快ともいえる体液。
人間は未知のものに怯える。
老人もその例に漏れず、急いで逃げ出そうとした。
しかし、それがいけなかった。
ただでさえ水で濡れている上に、妖獣の体液で滑りやすくなっている岩。
「うっ、うわぁぁっ!」
それは一瞬の出来事だった。
老人の身体は反転し、その場に大きな水音が響いた。
数分後、妖獣は老人の残留思念を喰らっていた。
「みんな、集まってくれてありがとう!」
放課後の空き教室。
そこに集まった能力者達を確認すると、長谷川・千春(中学生運命予報士)は口を開いた。
「ある有名な湧き水の水源に、妖獣が現れるようになったみたい。
姿は、角の生えたサンショウウオみたいな奴で、足が六本。その妖獣の体表から出る毒液のせいで、湧き水が汚れてるの」
いつも持ち歩いているメモ帳に視線を走らせ、千春は町の湧き水を管理していた男性が、被害にあった状況を伝える。
「今のところ被害は、事故にあったそのおじいさん一人で、すぐ町に出てくることは無さそうだよ。
でも、放っておいたら町に出てくるとも限らないから、そうなる前になんとかして欲しいんだ。川を辿って、湧き水の水源に行ってね。
妖獣自体は素早いわけじゃないけど、毒液には注意してね。水で薄まってる分にはまだ肌が腫れるぐらいですむけど、直接かかると腫れるどころじゃ済まないから。それと、水源地帯は岩場だから滑りやすいよ。気をつけてね」
パタン、とメモ帳を閉じ、千春はポケットへと閉まった。
「水が綺麗になったら、湧き水が飲めるんじゃないかな。有名なだけあって、すっごく美味しいんだって!」
千春は、教室にいる能力者達に向かって、思わずほっとするような明るい笑顔を向ける。
「大丈夫、きっと何とかなるよ! みんなからの良い報告を待ってるね!」
<参加キャラクターリスト>
このシナリオに参加しているキャラクターは下記の8名です。
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