●二人のクリスマス〜オラオラァ!犬ぞり様のお通りだ!
寒空の下、沙霧の瞳がきらーんと輝いた。
「冬! 冬冬冬、冬!! やっぱ冬と言えば雪! 雪といえばソリDa!!」
それはまるで、獲物を見つけた獰猛な動物の目のように。
「つーわけで、明良もソリで遊ぼうぜ!」
「もっちろん、お供しますよ、先輩♪」
明良を掴む沙霧の手の力が、妙に強いのは気のせいか?
二人は早速、ソリ作りを始めた。
とんかん、とんかんかん。
作業服を着た二人は、ソリの材料(?)を調達し、さっそく作成始める。
「箱に適当に足になるもんつければいいだろ? すぐできんぜ? 日曜大工にすらなってねぇ腕をみせてやらぁ!!」
なんだか突っ込みどころ満載な沙霧の言葉だが、どうやら何とかソリを完成させる事ができた。
「結構、格好よくできたねっ」
明良は満足げだが……第三者の目でみると、ちょっとアレなソリである。
後は壊れない事を祈るばかり……。
「さっそく乗るの、先輩?」
「いや、その前に……ソリを引く奴、さがさねぇとな」
「なるほど、動力源を確保するんだね」
沙霧の言葉に明良は納得しつつ、二人は着替えて、町に出た。
彼らが捕まえるのは、野良犬。
「う、うわあっ!! 俺の尻は食べ物じゃないったらっ!!」
カウボーイスタイルで極めた明良は、しっかりと野良犬に噛まれていたり。
「噛まれても泣くなよ? ソリを楽しむ為に必須なんだから気張れ? おっと、もう1匹発見っ!!」
噛まれて可愛そうな明良をよそに、沙霧はとりゃっと縄で野良犬を捕まえたのであった。
数時間後。
「きゃわんきゃわんきゃわんっ!!」
「わんわんわん!!」
「きゃうきゃうーん!!」
見事な野良犬の三重奏が町に響く。
彼らが引くのは、ちょっとアレなソリ。ソリに乗るのは、沙霧と明良。
時折、野良犬たちをびしりと叩く鞭がしなる音も聞こえた。
「ひゃーはー!! 速い、速いぜ犬共! 楽しさのあまり鞭の滑りも最高だな!!」
トナカイの角と赤い鼻、そしてサンタクロースの衣装に身を包み、沙霧はご機嫌で鞭を振るう。
その鞭は犬だけでなく……。
「わ、わあっ!! せ、先輩!? こっちまで鞭をふらな……痛っ!!」
黒いサンタクロースのコスチューム(?)に着替えた明良にも振るわれている。
見ているだけで、ちょっぴり痛そう。
「何で俺だけ〜」
ほろりと涙を浮かべる明良に沙霧は言う。
「たのしーなー明良? 来年も二人であばれよーぜー! はーはっはっは!!」
そして、また鞭を振るった。
犬だけでなくしっかりと明良にも。
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