●二人のクリスマス 〜 Love of a sacred night
恋人同士のクリスマス。
沙霧は、貯めたバイト代を使って、洒落たホテルに部屋を取った。
「やっぱ、恋人同士のクリスマスは、こうでなくっちゃなっ!」
予約を取り終えた沙霧は、爽やかな笑顔で、そう言った。
そして、当日。
「ココ、お待たせ!」
待ち合わせ場所で待っている小狐の前に現れたのは、大人っぽい黒のイブニングドレスを着た沙霧であった。
「……沙霧、綺麗……」
「どうかしたのか、ココ?」
「あ、な、何でもないっ」
そう言う小狐も白のタキシードを着て、格好よく決めている。その姿はまるで、何処かの諜報員のように。
そして、二人は目的地へと辿り着いた。
そこは高級ホテルを思わせる、洒落たホテルであった。
ホテルのレストランのテーブルに、二人はいた。
次々とテーブルに並べられる高級な料理を、沙霧は嬉しそうに食べていく。
だが、小狐はというと。
「沙霧……その、高そうだけど……大丈夫?」
そっと小声で訊ねる小狐。
「大丈夫! 気にするなよ。その分、バイトで稼いできたんだし」
「うん、それならいいんだ……」
少し安心したような笑みを浮かべ、小狐もやっと料理に手を付け始めた。
「……美味しい……」
「だろ? こういうのって、1回やってみたかったんだよな♪」
食事を終え、今度はホテルの一室へと向かう。
「うわぁ………」
このホテルは眺めの良いホテルでもあった。ホテルの窓から見えるその夜景は、ため息を付いてしまうほど、美しい。
「綺麗だな、ココ」
「うん、とっても綺麗だよ」
二人は寄り添うように夜景を眺めていた。
ふと、小狐の心に不安が過ぎる。
(「僕で大丈夫かな……」)
大人っぽい沙霧を見ていると、いつもは子供っぽい自分の事を思い、不安になってしまう。
思わず沙霧を見る。と、沙霧と視線が合った。
「え?」
「あ、その……な、何でもない……」
どうやら、小狐の不安はただの取り越し苦労のようだ。
頬を染めて、夜景の方へと視線をずらす沙霧に、小狐は微笑んだ。
「沙霧、こっち向いて」
「何? コ……」
淡い頬への口付け。それは不意打ちであった。
「メリークリスマス、沙霧」
「コ、ココ……ず、ずるいぞ」
照れている沙霧に小狐は嬉しそうに微笑む。
こうして、二人の夜はゆっくりと過ぎていったのである。
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