九鬼・桜花 & 藤梨・かがみ

●Sweet Sweet X'mas

 ほのかな淡い光が、部屋を包む。
 ゆらゆらと揺れるその光は、クリスマスキャンドルのもの。
 そして、テーブルにはたくさんの料理が並べられていた。
「わあ……これ全部、桜花が作ったんですか?」
「もっちろん♪ ま、まあ……初めてのクリスマスだし、ちょっとフンパツしちゃったわ」
 来年が大変そう、そう告げる桜花はなんだか嬉しそうで。
「すっごーい、凄いですっ!! で、でも……一人じゃ大変だったんじゃ……」
 ふと、かがみはイケナイ事を考えてしまった。
 もしかしたら、誰かが手伝ってくれたとか?
 かがみの胸が早く波打ち、そして、苦しくなる。
「ちょっとね。いつもより時間はかかったけど、一人で何とか出来たし」
「よ、よかったぁ……」
「ん?」
 はぁ〜っと、安心したような息を吐くかがみに、桜花は首を傾げていた。

 料理もほぼ無くなり、そろそろお楽しみのデザートに入る。
「かがみ、ケーキ、どこらへん食べたい?」
 小さなホールケーキ。桜花はナイフを持って、かがみに訊ねた。
「それじゃ、苺とブルーベリーの乗ったところ……」
「わかったわ」
 微笑んで、桜花はケーキを少し大きめに切った。
「わ、全部食べられるでしょうか……」
「ゆっくり食べれば大丈夫。それに……甘いものは別腹よ、ね?」
 そう励ます桜花にかがみは微笑む。
「それじゃ……いただきます」
 桜花から受け取ったフォークを手に、小さく切ったケーキを口に運ぶ。
「んっ!! ほいひいれふっ!!」
 もごもごさせながらも、ケーキの美味しさを伝えるのに必死なかがみ。
「喋るんなら、口の中をなくしてからにしたら?」
 くすりと桜花は笑い出す。そんなかがみが、とっても可愛く見えた。
「……だ、だって……本当に、美味しいんです……もの……」
 かがみの声が、小さくなる。
「お、桜花……?」
「ほっぺた、クリームついてたわよ」
 瞳を細めて、桜花はかがみの頬についていたクリームを嘗め取った。
「あら、こっちも」
「あっ……桜花っ……」
 唇についてたクリームも綺麗に嘗め取って。
「や、や……やだ……桜花……は、恥ずかしい……です………」
 かがみは真っ赤になりながら、そう言葉にした。
「あら、私のじゃ、嫌だった?」
「そ、そうではなくて、その……あの……」
 真っ赤になりながら、かがみの声はだんだん小さくなって。
「お、お返しですっ!!」
「えっ!?」
 今度はかがみが、桜花の唇に付いたクリームを嘗め取った。
「あっ……」
「そ、そういう、気分に……なっちゃうんです……」
「な、なるほど……ね」
 かがみの行動に驚きながらも。
「でも、こういうのも……悪くは、ないわね……」

 キャンドルが消えた。
 二人はぎゅっと抱き合い、キスを交わしていた。
 少しぎこちないキス。
 けれど、二人にとってそれはどうでも良い事。
 こうして二人でいられるのだから、幸せなクリスマスの夜に………。




イラストレーター名:たぢまよしかづ