宮代・社 & 尾崎・ジウ

●屋上にて 〜イブのお茶会〜

 事前に待ち合わせたわけではない。
 ただ、何となく屋上へ来てみたら、ジウがいた。
 ある意味、偶然と言えよう。
 それとも………。

「あ、宮代さん」
 にこりと微笑み、ジウは社に手招きする。社は導かれるようにジウのところへ。
「よかった、今日は会えないかと思っていなかったんです」
「あ、ジウ」
 そのまま座ろうとするジウを社は止めた。
「……直に座ると冷えるぞ? ほれ、コレでも敷いとけって」
 社は自分の首に巻いていたマフラーを、ジウの座る場所へ掛けてやる。その上にジウはちょこんと座った。
「ありがとう、宮代さん」
 その微笑を照れくさそうに見つめる社であった。

 とくとくと魔法瓶から暖かい紅茶が注がれる。
 その音がいつになく心地よく聞こえる。
「宮代さんも一杯いかがですか?」
 ジウが差し出したコップを、社は嬉しそうに受け取る。
「あぁ、貰えるとありがたい……此処、景色は良いけどどーしても冷えるからなぁ……」
 湯気の立つ紅茶を口にしながら、屋上から見えるクリスマスツリーを眺めていた。

 ジウから見えない所で、社は大切なものを持っていた。
 そう、ジウに渡すクリスマスプレゼントだ。
(「思わぬ所で会ったけど……コレ、何時尾崎に渡そう……?」)
 まいったなぁと心の中で呟きながら、そのときを伺う。
「おかわりはいかがですか?」
「あ、サンキュ」
 どうやら、そのときはまだ先になりそうだ。
 後ろ手で持つ、プレゼントを気にしながら、社はまた紅茶を口にした。

 クリスマスツリーは変わらない煌きでそこに立っていた。
 いつかは渡されるプレゼント。
 そのときのために輝いているかのように映る。
 社にとって、重要な意味を持つその時間は、確実に近づいていた。
 ジウのとびきりの笑顔で迎えられる、そのときを……。




イラストレーター名:ソガ