●二人だけの時間
クリスマスパーティーも夜を迎え、盛大に盛り上がる頃。
沙耶と白は、人気のない屋上へと来ていた。
粉雪が舞う屋上。夜の闇に輝く白い雪は、二人の瞳に美しく映った。
「……綺麗な雪、だな」
沙耶は、隣にいた白に声をかけた。
「……うん。そうだね」
白も沙耶の言葉に同意する。
時折、二人がつけているお揃いのマフラーが風に揺れる。
二人を横切る風が、冷たく感じる。
いや、それは当然か。今はこうして雪が降っているのだから。
静かだった。
殆どの者がパーティーを楽しんでいる時間。
その時間に屋上に来る者は少ない。
そう、この二人を除いては……。
「……少し」
無言で雪に見とれていた二人。その静寂を破ったのは、沙耶だった。
沙耶はその小さな背中を預けるかのように、白に寄り添う。
「……寒い、から……こうしていて欲しい……」
恥ずかしそうに顔を火照らせながら、沙耶は抱きしめて欲しいと白に願う。
「……うん。いいよ」
沙耶の願いに応えるかのように、白は、後ろからぎゅっと抱きしめた。
優しく、それでいて確かな抱擁。
互いの温もりが暖かさを増しているかのように感じられた。
「……あたたかい」
その沙耶の小さな呟きは、風に吹き飛ばされそうなほど、か細く、白の耳に届いたかもわからない。
だが、その顔には、とても幸せそうな微笑みがあった。
沙耶と白。
二人の心に宿る想いは同じものであった。
それは伝わらなくてもわかる想いでもある。
(「来年も、こうして一緒に過ごせますように……」)
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