●クリスマス・イブ 〜みんなが来るまで〜
がらりと天文部の戸が開いた。
「こんにちはなのじゃ……」
「こんにちはデス〜」
扉を開いたのは、命。その命を迎えるのは綾。ちょっと猫を被っている様子。
これも今日が特別な日だからだろうか?
「………命チャン以外、誰も来ないのデス……」
「……何だか少し、寂しいのう……」
二人はふうっとため息をこぼす。
「……あ、せっかくデスから、みんなが来る前に飾っちゃいましょうなのデス」
「飾る? 何をじゃ?」
「これなのデス!!」
綾が部室の奥から引っ張り出したもの、それはクリスマスツリーであった。
「ほう、こんなものが部室にあるとは思わなかったぞ」
そういう命の目はきらきらと輝いている。
「じゃあ、さっそく飾るのデス」
「了解なのじゃ♪」
二人はさっそく飾りつけしていく。
「これはこうしてっと」
「綾! 綾! これこれ……これはとても可愛いのじゃ♪」
楽しい時間は、唐突に。
「…………嘘だろっ!?」
「………とっても寂しいのじゃ……」
途切れてしまった。
どうやら、飾りが何処かにいってしまったらしく、明らかに足りない。
「い、いいえ、まだこれからデスっ!!」
綾は、今度は折り紙を取り出してきた。
「これで飾りを増量しちゃうのデス」
「おおおっ!」
こうして、飾り作りが始まったのだが……。
「な、何でこう、ぐしゃぐしゃになんだよっ!?」
結局、綾は命の作った飾りを取り付ける係になった。
「よっし、後はてっぺんの星とモールをつけるのみデス!! ……あれ?」
気が付けば、命は疲れて、うとうとし始めていた。
「……そうだ……わらわは、綾に言っておきたいことがあったのじゃ……」
目を擦りながらも、命は続ける。
「……その……この学校に来て、最初に……わらわに声をかけてくれたのが、綾だったのじゃ……すごく、嬉しかったのじゃ……だから……だから……zzz……」
最後まで言えず、命はすやすやと眠ってしまった。
綾はくすりと微笑み、命の頭を撫でる。
「お疲れ、命」
数時間後、部室は賑やかさを取り戻す。
そう、今まで来なかった部員達がそれぞれのパーティーを終えて、部室に遊びに来たのだ。
「ん……あれ? もう飾りつけが終わってるのじゃ……」
ぐっすり眠っていた命。すっかり疲れも取れた様子。
「あ、命チャン。寝言、言ってたデスよ」
「ね、寝言……わ、わらわはそんな事、言ってないのじゃ……」
どうやら今日は、夜遅くまで楽しいパーティーが続きそうだ。
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