闇乃・夜人 & 邑闇・シギ

●闇の誓い、愛しき人へ〜彼女から彼へ初めての×××〜

 町を彩るツリーのイルミネーションは、より一層、その場所を賑やかに輝かせていた。
「綺麗だね、シギ。やっぱり、来てよかったよ」
 そういう夜人の声は、少しはしゃいでいるようにも見える。
「夜人」
 ふとシギが夜人を呼び止めた。
「何? シギ」
「後ろを向いて」
「後ろ? こう?」
 シギの行動を不思議に思いながらも、夜人は言う通りにする。

 しゃらん。

 突然、首に何かが掛けられた。
「シギっ……こ、これって……」
「まだ動かないで、もうちょっとで終わるから」
 ぱちりと後ろで小さな音が聞こえる。
 そう、今、夜人の首で、光り輝く宝石のついた指輪のシルバーネックレスが揺れていたのだ。
「メリークリスマス♪ 夜人。俺からのプレゼント、気に入ってくれた?」
「……ありがとう……ありがとう、シギっ」
 嬉しさで溢れてきそうな涙を堪え、夜人は満面の笑みで喜ぶ。
 だが、その笑顔は、すぐに消えてしまった。
「ごめん、シギ……その……すっごく言いづらいんだけど……プレゼントまだ間に合ってないんだよ」
 夜人の告白。
 せっかく素敵なプレゼントを貰ったのに、お返しができないなんて……。
「シギに渡すプレゼントが、なかなか決められなくって……」
 ごめんという言葉が小さく響いた。
「そんなこと、気にしなくていいわよ。偶然、あなたに似合うものを見つけて、買っただけだし」
「それじゃ、ダメだよ! こんなに素敵なものをもらったのに、お返ししないなんて、絶対ダメ!!」
 夜人がムキになって、なおも叫ぶ。
「そんなんじゃ、私の気持ちが収まらないよっ……」
 堪えていた涙が、今にも零れそうだ。
「そうだっ!!」
「わ、何?」
「ねえ、シギ! シギの一番欲しい物ってなに? それをプレゼントにしてあげるよっ!!」
 そう夜人に言われ、シギは答える。
「そうね……だったら……夜人からキスくれない?」
 あげてばっかりだから、一度は欲しいのよねと、シギは悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「いいよ」
「やっぱりダメよね………え? 今、なん……」
 淡いキスで、シギの声は途切れた。
 ほんの数秒間、二人の時は、止まったように感じた。
「こ、こんなんでいいかな?」
 恥ずかしそうに照れながら、夜人は微笑む。
「最高っ! 今まで貰ったものより、一番……とっても嬉しいわっ!」
 二人はもう一度、今度はシギからの熱いキスを交わしたのだった。

 後日。
 彼らが所属している結社にて、シギに何度もプレゼントを聞く夜人の姿を見かけたり。
 その場にいた仲間達のいう『キス』という言葉に妙に反応する二人の姿があったり。
 とにもかくにも、このクリスマスの夜は、二人にとって思い出になった事は間違いない。
 願わくば、また来年も、その次の年もその次も……一緒にクリスマスを過ごせますように……。




イラストレーター名:井上柾