●Noisy-Holy Night
楽しいパーティーが終わった夜。
秋嗣は古織を家まで送っていた。
少し肌寒い外ではあるが、二人の繋ぐ手の温もりが、逆に熱く感じられた。
「とっても楽しかったですね、秋嗣さん」
にこっと微笑んで、古織は秋嗣を見る。
「ええ。私も楽しかったです」
秋嗣も笑顔で答えた。
普段は見せない、人目をはばからない純粋な笑顔……。
秋嗣のその笑顔は、今日という日に取っておいたかのように全開だ。
いつもならば、クラスメイトや結社などの仲間達のストッパー役として動く秋嗣だったが、今日は違う。
恋人の古織とクリスマスを過ごせる。
その幸せで、埋もれてしまいそうであった。
たとえるならば、嬉しくてこのまま月まで飛んでいってしまいそうなほどに。
「あ、ツリーです!」
古織は道の途中で、大きなクリスマスツリーを発見した。
大きな木にトナカイやプレゼント箱などお馴染みの飾りがいっぱい揺れていた。
それをさらに彩るかのようにカラフルなイルミネーションが光り輝く。
「綺麗ですね……」
「はい、とっても綺麗です」
秋嗣の言葉に古織は即座に答える。
と、白いものがゆっくりと舞い降りてきた。
「雪……見て、秋嗣さん、雪ですよ」
手を繋いだまま、駆け出す古織。
「あ、古織さん、ちょっと待っ……」
ずべん。
侮りがたし雪。
二人はそろって雪の中にダイブした。
だが、幸いな事に転んだ場所が、雪の柔らかい場所だったので、怪我をする事はなかった。
「古織さん、怪我はないですか?」
すぐさま秋嗣が声を掛ける。
「大丈夫です……あっ……」
ぺたんと尻餅をついたままの古織。ふと空を見上げ、笑顔を浮かべた。
「とっても綺麗です……」
雲の隙間から、綺麗な星空が見えた。そして、時折、落ちてくる淡い雪。
「何だか、綺麗ばっかり言ってますね」
「だって、どれも綺麗ですもん」
二人は顔を見合わせ、くすくすと笑い出す。
古織をそっと立たせて、雪を払う秋嗣。
にこっともう一度、笑みを浮かべて。
秋嗣は古織の頬にキスをした。
「一ヶ月ぶり……やーっとリベンジできたっ」
嬉しそうにそう言っているが、内心、かなりどきどきしていたり。
ちなみに一ヶ月前……秋嗣の誕生日に古織からキスのプレゼントを受け取っていた。
だから、今日は……。
「うなー!!」
あわあわと慌てる古織。それを楽しそうに見ている秋嗣。
二人の時間はまだ続くようである……。
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