●JOYEUX NOEL
ぴんぽーん。
「ん?」
美味しそうなパーティー料理を作るのは、ヴォルフ。
「誰だ……?」
その手を止め、玄関に向かう。
二度目のベルがまた鳴った。
「はーい?」
がちゃりと、ヴォルフが扉を開くと。
「おっす、ヴォルフ。遊びに来たぜっ!」
子狼の天狼を抱きながら、やってきたのは朔耶。
朔耶を見て、ヴォルフはふうっとため息を付く。
「パーティーは1時間後だが?」
「え? 嘘ッ!? だって、この招待状に……あっ!!」
どうやら朔耶は少し早く来てしまったようだ。
「まあいい。準備中だが、中に入れ」
「あ、サンキュ、ヴォルフ!」
「きゃうん」
朔耶の抱いていた天狼も嬉しそうに鳴いた。
ぽかぽかと暖かい部屋の中。
「わあ……」
クリスマスパーティーの飾り付けがされている部屋に、朔耶は思わず声をあげる。
「すごいな、これ、お前一人でやったのか?」
「ああ。それよりも……朔耶。その手に持っているのは何だ?」
ヴォルフに訊ねられ、朔耶はああと思い出したような声を出した。
「俺が作った手作りケーキの差し入れ! 頑張ったんだからな!」
朔耶の差し出した箱。その中から取り出されたのは、美味しそうなクリスマスケーキであった。
「これは美味そうだな……一応、キッチンに置いとくぞ」
ヴォルフは朔耶のケーキをキッチンに運ぶ。
「ヴォルフは何作ってるんだ?」
ちょっと暇な朔耶。キッチンにひょっこり入ってきた。
「オードブルとかいろいろだな。……邪魔するなよ?」
「するわけないじゃん」
とか言いながらも、その目はオードブルとかに釘付けだ。
「…………」
ヴォルフはまた、料理の準備に取り掛かった。
「これ、なんていうやつなんだ?」
「クラッカーにチーズや野菜を載せてみたやつだ」
「これって、あの、七面鳥ってやつか!?」
「ああ。後で俺が分けてやるよ」
目を輝かせながら、朔耶はあれこれとヴォルフに話しかける。
ヴォルフも朔耶に応えながらも、その手は止まる事はない。
いや、その手が今、止まった。
「朔耶、何をしている?」
「あ……」
つまみ食いしようとする朔耶を睨むのはヴォルフ。
「わ、た、タンマタンマ! まだ食べてないってば」
「そうか、食べようとしていたのか……」
ふうんというヴォルフの目が、何時になく怖かった。
ぴんぽーん!
またベルが鳴った。今度は皆が来たという印。
「さて、出迎えに行くか」
「おうっ!」
朔耶のおでこが赤くなっていたのは気のせいだろうか?
彼らのクリスマスパーティーは今、始まったばかり……。
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