黒崎・累 & 観月・咲夜

●こたつでもふもふ

 累と咲夜は、クリスマスの夜をコタツでのんびり過ごしていた。
 一応クリスマスだからと、小さなクリスマスツリーを置いて、ささやかながら飾り付けをしてはいるけれど。今、何よりもこの場を彩っているのは……箱いっぱいの、みかんだった。
「やっぱコタツといえば、みかんだよな!」
 なんて言いながら、累は早速みかんの皮をむいて、もぐもぐ美味しそうに食べている。
「いかに、一度で細く長くむくかだよな……ようし!」
 一方、咲夜は何やら熱い眼差しを浮かべると、みかんの端に指をかけて、ゆっくりと、ゆっくりと……くるくる回しながら皮をむいていく。
 それはみかんというよりも、りんごや大根の皮をむいているかのようだ。
「へぇ……」
 真剣な様子で皮をむく咲夜に、累は興味深そうな視線を向ける。
 こんな皮のむき方もあるんだ、なんて顔をしながら、累はまた次のみかんに手を伸ばすと、それを真ん中から2つに割って、むしゃむしゃ。

 そうして、みかんの皮が半分ほどむけた時。
「ああっ!」
「あ」
 二人の口から思わず声が漏れた。
 ぷつりと。
 みかんの皮が、何の前触れもなく、途中でちぎれてしまったから。
「あーあ……切れちゃった……」
 もうちょっとだったのに、と実に残念そうな顔で溜息をつく咲夜。
 そんな、落ち込んだ様子の彼に、累は「まあ元気出せよ」と声を掛けて。
「次のみかんで、また頑張れ!」
 な? と笑いながら、傍らの箱から新しいみかんを取り出すと、咲夜に手渡す。
「……そうだよな。よーし、今度こそ!」
 累の言葉に頷いて、咲夜はまた真剣な顔でみかんを持つ。

 そうして、やっぱりまた途中で皮をちぎってしまったり、力を入れすぎて、うっかりみかんを潰してしまったりしながら、2人はみかんをむいて、のんびり、ゆったりとした空気の中で、クリスマスを過ごす。
「……こういう、まったりな時間って、幸せだよなぁ」
 最後のみかんをコタツの上に置きながら、そう累はぽつりと呟く。
 こんな風に過ごす時間は、平凡で、とても当たり前のように思えて……でも、とても大切なもの。
「そうだな。ずっと、こんな風に、一緒にいれたら……いいな」
「だなっ」
 最後の挑戦とばかりに、みかんを手にした咲夜に、笑顔と共に頷く累。
 ずっと、ずっと。
 この、大好きな人と一緒に、こうした時間を共に過ごしていけるように……。

「あ!」
「お、成功じゃん」
 最後にようやく、綺麗に皮をむけた咲夜は、それを半分こにして、累と2人で分け合った。




イラストレーター名:黄桜伽奈子