●素敵なイヴの過ごし方 〜ふたりのクリスマス〜
「わぁ……」
ブルーツリーを前に、小夜は思わず歓声をあげた。
いくつもの青の電飾がきらめき、近くに飾られた氷のオブジェに反射する。
すると、更にまたその光がきらめいて……。
きらきらと輝くように光が揺れる、この場所はとても素敵だった。
「綺麗なツリーだな」
「はい……」
隣に立つ隼人の言葉に、小夜は彼を見上げながら頷く。
周囲の街並みの明かりと重なったツリーは、このまま、ずっと見続けていたいくらい。
「……あ」
そんな2人の耳に、広場の時計の鐘が届く。直後、それに続けられるようにメロディが流れて……それと同時に、どこからか、ふわふわとシャボン玉が飛んで来る。
「すごく、綺麗です……」
緩やかな風に乗って夜の空を舞うシャボン玉も、イルミネーションにきらめいている。
「ちょうど、タイミング良かったみたいだな」
ツリーだけでも綺麗だけど、シャボン玉が重なれば、更にもっと素敵だ。
ラッキーだったな、と笑いかける隼人に頷き返し、小夜はイルミネーションとシャボン玉に彩られたツリーを見つめ続ける。
風が吹くたびに揺れるシャボン玉は、弾けて消えるその瞬間まで、とても綺麗で。
ゆらゆらふわふわ、辺りを漂うシャボン玉が、少しずつツリーの眺めを変えるから、いつまで見ていても見飽きない。
……でも、夜の風は冷たい。
立ち止まった体に忍び寄る冷気は、少しずつ小夜の体を冷やす。まして、風が吹けば、そのまま熱を奪われてしまいそう。
「小夜ちゃん、大丈夫?」
ひときわ強く吹いた風に、小夜が体を震わせると、隼人が心配げに覗き込んだ。そのまますぐにマフラーを外すと、ふわりと彼女の首元に回す。
「これ、使ってくれよ……って、そもそも、元は小夜ちゃんから貰った奴なんだけどさ」
「で、でも、あの、それじゃあ隼人先輩が……」
「俺はコートだけで十分暖かいから、大丈夫だぜ」
躊躇う小夜だが、そう満面の笑みを向ける隼人の言葉に甘えて、マフラーを借りる。
指先で触れれば、彼の為にこのマフラーを一生懸命編んだ時の事が、脳裏をよぎる。
「……これを着けてると、すごく暖かいんだぜ。ありがとうな、小夜ちゃん」
改めてお礼を言う隼人に、小夜は照れながら首を振って。彼が、このマフラーを大切にしていてくれている事を嬉しく思う。
たとえ、それが女性としてでなく、妹に対するような感情に由来するものであったとしても……。
「……あの、隼人先輩。もう少し、近くで見てみませんか……?」
「ああ、そうだな。行こうか」
2人はツリーの真下まで近付くと、また、きらめくブルーツリーを見上げた。
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