高田・瀬良 & 西古佐・吠示

●Happy Holidays

 クリスマスイブ。
 なのに、吠示の瀬良との恋の発展も、もうすぐ夢と散ろうとしていた。
 結局、いつも通り、体に打撲傷を増やしただけで終わるのだろうか?
 いや、今日は………。

 パーティーを終え、吠示は瀬良に別れの挨拶をした。
「それじゃ、今日はこれで……」
「ちょっと待て」
 ぐいっと瀬良に捕まった……はずだった。それを見るまでは。
「……今から吠示の家に行きたいんだけど」
 俯いた顔をそっと吠示へと向けた。
 潤んだような瀬良の瞳。
 今、吠示の頭の中に、ここでは書けないやましいものが多数過ぎった。
 ばちこーーーんっ!!
 直後に瀬良から放たれた裏拳によって、吠示は現実に戻ってきた。
 ちょっと鼻骨に違和感があるのは、きっと気のせい。
 吠示は大人しく、瀬良を家へと案内するのであった。

 そして、吠示の家に到着した。
 吠示の家は豪邸と呼ぶに相応しく、流石の瀬良も目を見張っている。
 と、瀬良の視線がとある建物に注がれる。
「……あの大きな建物は?」
「あっえーと、講堂。……うち、教会だから……」
「……そう」
 瀬良はゆらりと講堂へと向かう瀬良を、吠示は慌てて追いかけた。

 キャンドルが揺れるたび、講堂の中は少し暗くなる。
 そのキャンドルの明かりは、見るに弱々しかった。
 瀬良は祭壇に腰掛け、ポケットから小さなボタンを取り出す。
 ボタンに描かれているのは、夜に怯える聖人の宗教画。
 小さく埋め込まれたペリドットは、ナハトに朝を呼ぶ太陽の象徴でもあった。
「……ペリドットには、魔を退ける力がある」
 歌うような瀬良の声。
「持っていろ」
 押し付けるかのように、瀬良はそれを吠示に渡した。
「あっ、ちょ、ちょっと待って」
 慌てて吠示も自分のプレゼントを瀬良に渡した。
「せ、瀬良ちゃん。俺もこれ……足もセットだといいなぁって思って」
 吠示が差し出したもの。
 それは赤いペディキュアであった。
 瀬良はそれを一瞥して、吠示の目の前で自分のストッキングを脱いだ。
 そうして、露になった足を吠示に差し出し。
「塗ってみろ」
 そういう瀬良の後ろの、ステンドグラスが輝いた。

「1回はみ出たら、1発だからな」
「………」
 その後、結局何発お見舞いされたのかは、二人以外、知る由も無い。
 ただ、吠示は顔中、赤く腫らしながらも幸せそうだったようである。




イラストレーター名:七夕