●『まーくんハイ、あ〜んv』 『あーん♪』
甘い香りが調理室を包み込む。
先ほど出来たばかりのステンドグラスクッキーがたくさん並べられている。
そのステンドグラスクッキーとは、クッキーの生地を型で抜き、そこに色とりどりの水あめを流して作る、きらきらと輝くクッキーのことである。
又の名をキラキラクッキーともいう、そのクッキー。
瑠姫はそのうちの何個かをナプキンに包んで、その調理室を後にした。
クリスマスの飾り付けがされている、いつもとは違う、お洒落な教室。
可愛らしいその内装に顔をほころばせながら、瑠姫は目的の席へと向かう。
「やあ、瑠姫クン」
「あ、まーくん! ちょっと待たせちゃったかな?」
ちょんと座って、瑠姫はさっそく、持ってきたお茶をティーカップに注いだ。
「いや、さっき来たばかりだよ」
誠はにこっと微笑み、そう告げた。
「よかった。それならいいんだ。あっと、それではさっそく……」
瑠姫はさっそく、持ってきたカラフルなナプキンを開いた。
「わあ……とっても綺麗だね! ……くまさんだよね?」
「そう、くまさん♪ ちょっとカラフルなくまさんだよね」
くすっと微笑み合う二人。
誠が一口お茶を飲んでいる間に、瑠姫はその一枚を手に取った。
「まーくんハイっ、あーん♪」
瑠姫が差し出すクッキーを。
「あーん♪」
と誠がぱくんと食べてみる。
「ふ、なかなかイケるね」
そう味の感想を述べる誠に瑠姫は。
「きゃーっ! 嬉しい♪ ありがとう、まーくん!」
すっごく喜んでいる。ハートがいくつあっても足りないくらい瑠姫の周りに飛んでいるかのようだ。
と、誠はちょっと格好つけて口を開いた。
その手には、もう一つのステンドグラスクッキー。もちろん、瑠姫が作ったクッキーだ。
「ではお姫様、お返しにボクのクッキーはいかがですか?」
『えっ!?』と驚く瑠姫。けれどすぐに気を取り直して。
「はい、いただきます」
瑠姫も上品にそう答えて、誠のクッキーは瑠姫の口の中へ。
「うん。美味しいね、まーくん」
「とってもね」
二人は笑顔で、残りのクッキーもあっという間に平らげてしまった。
こうして、キラキラクッキーは、二人の素敵な思い出となって、いつまでも心の中で輝くのであった……。
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