●瓜坊爆食中
その日。
何故か竜は猪の着ぐるみでちょこんとコタツに座っていた。
「えへへ♪ ちょっと気が早いけど、来年の干支なんだよ」
どうやら、時代を先取り……のようである。
竜が浮かれ……いや、嬉しそうにしているのは、理由がある。
そう、今日はクリスマス。
しかも、義兄である契がクリスマスディナーを作ってくれるのだから。
ふと、美味しそうな香りが漂ってきた。
それはどんどん近づいてくる。
どうやら、美味しそうなご馳走が出来たようだ。
「さあ、出来たぞ」
契は給仕姿で、大小様々な料理がコタツの上に並べられた。
「すっごーい、これ全部お兄ちゃんが作ったの?」
「まあな」
竜の言葉に、契は恥ずかしそうに頷く。
「それよりも、早く食べろよ。料理が冷めちまうだろ」
「はーい。じゃあ、いただきますっ!!」
契の言葉に竜は、さっそく料理に手をつけようとする。
が、その手はすぐに止まってしまう。
「いや〜ん、どれにしよう。まよっちゃう〜〜」
無理はない。こんなに美味しそうな料理が所狭しと並んでいるのだから、迷ってしまうのも仕方ないだろう。
迷う竜に契は。
「好きなのを食べろ。まだまだあるぞ?」
どうやら、料理はこれだけではない様子。
「じゃあ、これからたーべよっと!!」
竜が選んだのは、子豚の丸焼きであった。
美味しそうに食べて行く竜。
料理を運んだり、空いた皿を片付けるのは契。
もちろん、その合間に自分の作った料理を食べる事も忘れない。
どちらもなんだか楽しそうであった。
美味しい夜。
今日は二人にとって、想い出のクリスマスディナーになったに違いない。
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