●聖なる夜に
「プリム、ちょっといいかな?」
クリスマスのパーティー会場にて、プリムは一葉に呼び止められた。
「一葉?」
驚くプリムに一葉は、安心させるかのように微笑む。
「少し外に出ないか?」
雪が舞う路地。
二人はゆっくりと歩いていく。
「何処に行くの?」
隣にいる一葉に声を掛けるプリム。
もう会場には戻らないからと言われ、プリムは鞄とマフラーを手にこうして外にいる。
「答えても良いけど、その前に……」
自分が着ていたコートを、そっとプリムに掛けてやった。
「一葉……」
プリムの言葉は、一葉の人差し指で止められる。
「大丈夫だよ。寒いのには慣れているから」
「でも、やっぱり寒いんじゃなくて?」
プリムは自分のマフラーの半分を一葉に巻いてやった。
「こうすれば、暖かいわ」
「プリム……」
「でも、ちょっと……恥ずかしいわね」
頬を僅かに染め、プリムは一葉を見た。
一葉はプリムをそっと抱き寄せる。
まるで、それは感謝の印のように。
プリムは嬉しそうな微笑で、自分の肩に乗せられた一葉の手の上に、自分の手を乗せた。
「素敵……」
思わずプリムが呟く。
そこはとある高級レストランの一席。
しかも窓際の一番景色の良い席でもあった。町の夜景が眩しく見える……。
「さあ、乾杯しよう。プリムと聖なる夜を過ごせる事を祝して」
「ええ、乾杯……」
ちりんと心地よいグラスの音が響いた。
食事を終えた二人は、また外に出る。
「綺麗なイルミネーション……また、一葉と見られるといいわね」
「プリム」
イルミネーションを眺めるプリムを見つめながら、一葉は彼女に寄り添う。
綺麗なイルミネーションが点滅するその場所で。
一葉はそっとプリムを抱きしめた。
「もうずっと、プリムを離さないよ……」
「私も、ずっと離さないから……」
抱きしめられた温もり。
二人は互いにその温もりを感じながら、互いの想いを確かめ合う。
そう、二人の夜はまだ、始まったばかりなのだから。
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