●たまには恋人で居たいから
「こんな感じでしょうか……?」
周は難しげに首を傾げながら、自室の窓を混ざりつけた。
今日は12月24日、クリスマスイヴ。
……正直、周には、西洋の風習であるクリスマスの事は、あまり良く分からないのだけど。許婚のティアチェリカが一緒にクリスマスを過ごしたいというなら、たとえ見よう見まねであっても飾りつけるまで。
彼女が好きな事をして、一緒にケーキを食べて、1日を過ごす。
それが、周にとってあまり馴染みの無いイベントであっても、彼女と一緒ならば、それはとても楽しい時間のはずだから。
(「ティー、おめかししてくるって言っていたけど、何着て来るんだろう? まあ、何を着てても可愛いからいいけど……あまりの可愛さに、惚れ直しそうだ……!」)
ほわん。
彼女の姿を見る前から、どこか幸せそうな周だった。
そして……。
「周、来たわよ」
やがて遊びに来たティアチェリカは、楽しげに顔を綻ばせた。
クリスマスらしくトナカイケープを着込み、一緒に遊ぼうと用意したトランプを出して見せる仕草は、周にとっては想像外ながらも、とてもとてもとても可愛くって。
(「ああ、幸せ……」)
全身に満ちていく幸福感を噛み締める周。一方、コタツに早速座ったティアチェリカは、用意されたミニツリーやクリスマスケーキに、嬉しそうに目を細める。
一緒に過ごせるクリスマスが、とても嬉しくて。わくわくして落ち着かなくて。ついつい頬が緩んでいくのを感じながら、ティアチェリカは周を見上げる。
「ほらほら周、ぼーっとしてないで早くっ」
「ああ、ごめん」
その言葉に、コタツの反対側へと腰を下ろす周。それを待って、ティアチェリカはトランプを広げる。
「周、今日は眠くなるまで遊ぶわよ♪」
そうカードを配るティアチェリカの様子は、本当に楽しそうで。それを見ているだけで、周の心も楽しく浮き立った。
7並べ、ポーカー、スピード、神経衰弱。
色々なトランプで遊んで、合間にケーキを一緒に食べて。
そうして過ごすうち、外はすっかり真っ暗だ。
「じゃあ次は、ババ抜きね♪」
そうカードを配って、互いに1枚ずつカードを引き合う。
(「どれがジョーカーだろう……?」)
真剣な眼差しでカードを選んだ周が、しゅっと引き抜いたカードの絵柄は……ジョーカー。
「う」
「ふふふっ。周、引っかかったわね」
声を詰まらせた周に、楽しげに笑うティアチェリカ。
結局、そのままババ抜きは周の負けになってしまったけれど……まあいいか、と周は思う。
だって彼女が、とても楽しそうだから。
「ティー、次は何をする?」
「そうね、えーっと……」
笑い合う2人の声が部屋中に響き……そんな、楽しいクリスマスの夜は更けていくのだった。
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