●パーティーの終わりに〜恋人と〜
二人っきりの時間はかけがえのないもの。
特にクリスマスといった特別な日の時間はなおさら……。
ゆっくりとした曲が流れ出した。
そう、チークタイムが始まったのだ。
英世が千絵子に手を差し伸べる。
「さあ、行きましょうか」
「は、はい……」
緊張した面持ちで千絵子は、英世の手に自分の手を乗せた。
千絵子が緊張しているのには理由がある。そう、こういったダンスの経験が乏しいのだ。
だからこそ、初心者でも踊りやすいチークタイムを選んだ。
テンポもゆっくりめでリズムが取りやすい。
「はい、次は右足を前に……そう、いいですよ」
英世は緊張している千絵子に優しくダンスの指導をしていた。
「は、はいっ」
足ばかり見ていると無作法だと思い、極力、英世の顔を見ているのだが……。
「あっ、す、すみません……」
これで何度目だろうか。千絵子はまた英世の足を踏んでしまった。
「大丈夫ですよ、これくらい」
言葉どおり、英世はそんなこと全く気にしていない。
それよりも英世がプレゼントしたドレスに三日月をあしらった銀のネックレスをつけて、笑顔を見せる千絵子が堪らなく愛らしく思えた。
そう、二人の時間を過ごせる事が、なにより嬉しかったのだ。
一方、千絵子は足を踏んでしまわないよう、注意しながら踊っている。
指導が良いのか、徐々に足を踏む回数も減ってきているようにも思える。
(「なんだか少し、照れますね……」)
体を密着させ、英世の顔もいつもよりも間近に感じられる。
嬉しいのは、英世だけではない。
そう、千絵子も同じく、嬉しい気持ちでいっぱいであった。
千絵子は、大好きの気持ちを込めて、英世に微笑み、そして。
「先輩」
その声と同時に、英世の頬に千絵子の唇が重ねられた。
「え?」
思いがけないキスのプレゼント。
千絵子は恥ずかしそうに頬を染めながら、また微笑んだ。
英世は驚きながらも、笑顔を取り戻す。
「メリークリスマス、千絵子クン」
曲が終わる頃、英世はその時間を惜しむかのように、千絵子にたくさんのキスを贈ったのであった。
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