市之瀬・連 & 湊華・力

●Merry Christmas!!〜プレゼントはサンタさん〜

「はー、疲れたぜ……」
 クリスマスパーティを終えて帰宅した連は、くたくたに疲れた様子でドアを開けると、電気も付けずに、そのままベッドに倒れこんだ。
 もう、今日はこのまま寝てしまおうか。
 そんなことを考えながら、目を閉じて……しばらくすると。

 コツコツ、コツコツ……。

 眠りに落ちようとしていた連の耳に、窓を控えめに叩くような音が聞こえた。
 一体、何事だろうと思いながらも起き上がり、連が窓を開ければ……。
「メリークリスマス!」
「なっ……!」
 その瞬間、飛び込んで来た人影が1つ。それは、ミニスカサンタ服姿の力だった。
 勢いのまま突っ込んできた力に、連は押し倒されるような格好になる。
「り、力!?」
「どう? 連。生まれて初めてのサンタクロースは♪」
 いきなりの事に驚く力だが、彼女が自分の為にそうしてくれた事を理解すると、「ああ、悪くねーな」と頷き返す。
「サンタって事は、プレゼントなんかもあったりすんのか?」
「……ぁぅ」
 問う連だが、力は声を詰まらせて俯く。どうやら、その辺りの準備は出来ていないようだ。
「まあ、気持ちだけで十分だけどな……ああ」
 そんな力に向けて笑いかけながら、連は少しだけ悪戯心を出す。
「なら……」
 その顔に浮かぶのは、それまでとは違う邪悪な笑み。素早い身のこなしと共に腕に力を込め、瞬く間に、自分の上に乗った力との位置を入れ替え……そのまま押し倒す。
「きゃんっ!?」
 突然の出来事に悲鳴をあげる力。変化についていけず、彼女の動きが止まっている間に、連は頭のバンダナを外すと、素早く力の目元を覆う。
「や、暗い……」
 視界を塞がれ、それが固定される感触に、少し怯えの色を滲ませてこぼす力。
 その間にも、近くでチャリッと、金属の触れる音が聞こえて……。
「ひゃぁ!」
 いきなり首に触れた感触に、上擦った声を上げる。ひんやりとした冷たい感触……それが首輪である事に、力はすぐに気付けない。
「折角のクリスマスだし、じっくり楽しませてもらうぜ……」
 そう囁く言葉が耳にかかる。
 何も見えない中、伝わるのは相手の息遣いと、微かに触れるカラダ。
 いつ、何が触れるか分からない状態は、力の体を強張らせ、それが彼女の感覚を過敏にさせる。
「つ、らね……」
「そうだなぁ……御主人様、って呼んだら、ご褒美やるぜ?」
 連がそう優しく囁けば、力は躊躇いながらも、弱弱しい唇で「ご、御主人さ……ま……」と紡ぐ。
「早く、目隠し取って……暗いの、嫌……」
「ああ……ご褒美の、後にな」
 彼女の言葉に、また人の悪い笑みを浮かべながら、連は首輪の鎖を手繰り寄せて。
「え……?」
 か細い声を漏らす彼女の体に触れると……長い長い、クリスマスの夜を楽しむのだった……。




イラストレーター名:たぢまよしかづ