●寒いからこそ暖かい温もり
優とルナルネーヴェの二人は、学園の敷地内を走っていた。
二人が目指すのは、宿り木。
その下で告白してキスをすれば、永遠に結ばれる。……そんなジンクスの囁かれる宿り木を、二人は探しているのだ。
決して、はぐれないように……誰にも邪魔されないように。
ぎゅっと固く、しっかり互いの手を握り締めながら。
「あ……!」
やがて、ルナルネーヴェは優の手を引きながら、その足を止めた。
息はすっかり上がっているが、決して疲れたからではない。
それは彼女の瞳が、ある物を見つけたから。
「あれ、ですね」
優もまた、それに気付いた。
赤いリボンで飾られた小さな枝。あれこそが、噂に聞いたジンクスの宿り木に違いない。
見つけられた、と二人が安堵に胸を撫で下ろした瞬間、周囲にイルミネーションが灯る。
「わぁ……」
きらきらと、きらめく光にネオンの文字。
それらにサンタクロースのオブジェが浮かび上がり、ルナルネーヴェは思わず歓声をあげた。
「……ルナル」
そんな彼女に、優はそっと手を伸ばすと、両腕で大切そうに、その体を抱きしめた。
とくん、と胸が高鳴る。
「私は君色に、君は私色に……なろう?」
そっと囁く優の言葉。ほんの少しだけルナルネーヴェの体が強張る。
それを落ち着かせようと、優は彼女の手を握る。
(「……ほんとは」)
触れた温もりに、ルナルネーヴェは思う。
この間は拒否してしまったけれど、あの時は彼もひいていったけど。
でも、本当は、キス……して欲しかった。
もっと、もっと好きって伝えて欲しいから。
だから今日は、今日こそは……自分の方から伝えるのだ。
キスで、好きだって。
(「……大丈夫」)
怖くて震えてしまったとしても、泣きそうになってしまっても。
優の事が好きだから……。
「ゆうくん……ゆうくんのこと好きだから……早く、お願い、なの……」
だから大丈夫と、そう見上げるルナルネーヴェに頷くと、優は片手でそっと頬を撫ぜながら、彼女の唇にキスをする。
その想いに、しっかりと応えるように。
互いに頬を赤くしながら、想いを交わすように触れ合う、長い長い口づけ。
そっと離れながら、ルナルネーヴェは微かに微笑む。
「……よかった、の。ようやく、できたの」
「ええ……」
その言葉に頷き返して、優はもう1度、大切そうにルナルネーヴェを抱きしめる。
そんな二人の姿を、クリスマスのイルミネーションが包んで。
そっと、静かに宿り木が見守っていた……。
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