●サンタコス ドンタコス メキシカン♪
12月24日、クリスマス・イヴの夜。
風花と華琥は可愛らしいサンタコスチュームに身を包み、大きな白い袋を背負いながら、夜の街を歩いていた。
袋の中身は、色とりどりのプレゼント。
そう、2人は『サンタさん』として、プレゼントを届けている最中なのである。
「うーんと……」
不意に、風花は地図を広げながら、難しそうに眉を寄せた。
この辺りのはず。
この辺りに、あるはずなのだ。
でも、何故か不思議と、目的の家が見つからない。
もうかなりの時間、この辺りをぐるぐると回っているはずなのに……。
「……どこでしょう?」
道が入り組んでいて、あまりよく分からないと、風花はちょっぴり涙ぐむ。
「うーん……?」
ひょいっと覗き込んでみる華琥だが、すぐに視線を逸らした。
「いあ〜、サンタさんの服が着たい為に軽く配達を引き受けてしまいましたが……」
思ったよりも大変ですねー、あっはっは……などと笑うと、気を取り直して風花を見る。
「ま、まだまだ先もなげーので、ここらで1回休憩でもしますかー?」
「……そうですね〜。わたし、お腹すいたですぅ」
こくんと頷いた風花の言葉に、華琥は何かを閃いた様子で振り返った。
視線の先には、大きな大きなプレゼント袋。
そういえば少しお腹も空いたし、この中に何か食べ物は無いだろうか?
「お、それっぽいの発見!」
おもむろに、がさごそと漁り始めた華琥の手が掴んだのは、1つのスナック菓子。
その名も、
「えーっと……『サンタコス』? おー、おー、サンタのコスチュームでサンタコスッ!」
奇妙な偶然だと笑いながら、華琥はなんとなく、適当に思いついたポーズを取ってみる。
「あっはっは、なかなか洒落がきーてておもしれーですなー」
言いながら早速、華琥はサンタコスの袋を開けると、ひとつまみ口へ運ぶ。
「って華琥先輩、それプレゼントじゃあ……」
食べたらマズいのでは……と汗を浮かべる風花だが。くるるるる、と可愛らしく鳴ったお腹の具合と、目の前の誘惑には勝てず、結局袋に手を伸ばしてしまう。
「……あ、結構いけますね」
一口ぱくりといけば、それはなかなかのお味。もう1口、もう1口だけ……とついつい手が伸びてしまい、やがて気付けば、袋自体も華琥の元から風花へと移動している。
「……これはきっと、サンタさんからわたし達へのプレゼントですね!」
また一口頬張ろうとしながら、そう笑う風花に「そうかもですねー」と笑いながら体を伸ばして。
「さぁってと。一休みしたら、また頑張りますかね〜?」
「はーい、頑張りましょうっ」
そう頷き合うと、サンタコスでの休憩を終えて立ち上がる二人。
袋の中身は、まだまだたくさん残っている。
これを待っている人達の元へ……幸せを運ぶのが『サンタさん』のお仕事なのだから。
「れっつごー!!」
2人はまた元気よく、袋を担いで歩き出した。
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