フォーカス・ロックフェル & 藤宮・舞兎

●ずっと一緒だよ…

 二人が出会ったのは、たった一つのきっかけ。
 別のキャンパス、別の学年の二人が偶然出会い、結ばれた。
 そんな二人が会うのも、月に数回と限られてしまう。
 ある意味、遠距離恋愛とも言える、二人の距離。
 だからこそ、二人が会う時間は貴重で、尊くて………。

 クリスマスの日。
 幸いにも二人は、その尊い時間を持つことができた。
 そう、クリスマスパーティーだ。
 二人は楽しいひと時をパーティーで過ごし、また新たな想い出を作った。

 いや。それはまだ、帰りの電車の中でも続いていた。

 揺れる電車。
 二人は寄り添うように席に座っていた。
「また会えなくなるのか」
 フォーカスの少し寂しげな声に舞兎は顔を上げた。
「そんな悲しい事……言わないで」
 舞兎はフォーカスの手に、自分の手を重ねる。
「もっと長く居れたら良いのにね」
 そういうフォーカスの言葉に舞兎は頷く。
 離れたくない。
 その想いは同じ。
 そう、もうすぐ、また別れてしまう。
「電話するよ。メールも」
 舞兎の流れるような長い髪を、フォーカスはそっと撫でる。
 フォーカスの指には指輪が輝いていた。
「わ、私も……私もする、から……」
 乗り出すように舞兎も言う。そんな舞兎の手にもフォーカスと同じ指輪が輝いていた。
「まと、大好きだよ」
 甘く囁く声。その声は舞兎の耳元で響く。
「人が見てるから……」
 恥ずかしそうに舞兎は、頬を染めて顔を逸らす。けれど、フォーカスの手でその顔は戻されてしまう。
「誰もいないよ?」
 くすっと微笑み、二人は唇を重ねる。
 甘い息遣い。
 息が止まりそうな熱いキス。
 舞兎は全身が溶けてしまいそうだった。
 と、唇が離れた。
「あっ……」
 舞兎の瞳が潤む。
 声を上げようとして、フォーカスと目が合う。舞兎はつい、視線を逸らしてしまった。
 舞兎は頬を更に赤く染めながら、フォーカスに寄り添う。
「どうかした?」
 意地悪な声。舞兎は戸惑いながらも、なんとかそれを言葉にした。
「もっと……ちゅーして……?」
 フォーカスは返事の代わりにもう一度、キスをした。

 フォーカスと舞兎の手が重なる。
 舞兎の手がぎゅっとフォーカスの手を握った。
 ……離さないで……。
 そう、言っているかのように。

 フォーカスはそっと唇を離し、舞兎を抱きしめた。
「ずっと一緒だよ」
 その言葉は、眠りに付くまでずっと、熱を帯びたように熱く、舞兎の耳に残ったのであった。




イラストレーター名:如月 姫人